「のれん」と「ブランド」について考える―「あるもの」と「なるもの」の違い―Ⅰ
我々会計人は時々「のれん」という言葉を使う。
企業譲渡のときなどによく出てくる言葉である。
企業はいろいろな有形無形の資産を有している。
通常、有形の資産(金銭や債券、不動産など)は貸借対照表上にその評価額とともにきちんと表記されている。
しかし、その企業が営々と築いてきた「信用」「専門技術」「ノウハウ」「得意先ネットワーク」といった無形の資産は一切表現されていない。
これもその企業の持つ立派な資産である。
こういった無形の企業資産を、「のれん」と呼んでいるのである。
それだけで、なんとなく我々日本人には理解できる言葉ではあるが、専門的には「営業権」と言ったりしている。
例えば、ある企業の貸借対照表上の純資産が、仮に1億だったとする。
その場合、M&A(企業売買)において1億円で売却されることはない。
これに必ず「のれん」(営業権)の代金がつくからである。
その企業の損益計算上の収益力が大きければ「営業権」の評価は高くなる。
1億が1億5千万にも1億6千万にもなるわけである。
あまり会計的な話を、細々(こまごま)としてもしょうがないので、「ブランド」との関係を考えてみたい。
「のれん」と「ブランド」・・おそらくかなり混同して捉えられているこの二つの言葉の意味には大きな違いがあるのだ。
つづく