真面目の功罪―柔軟性への挑戦―Ⅳ

インタビューはさらに続いた。

 

顧客主体(マーケットイン)に環境が変わってきたのに、なぜ有効な対策を取ることができなかったのか?という質問に対して

― 三菱重工業は複数の造船所がありそれぞれ独立性が強い

自分たちだけでやろうという「自前主義」が幅をきかせている。(中略)

他人に聞くのを恥とする風土がある。―

と、答えている。

 

独立性が強いのは何も悪いことばかりではない。

統率力の強さや責任感といった点ではいいことも多々あるだろうと考えられる。

 

しかしながら、今回の豪華客船製造においてはそれが裏目に出た。

その点を宮永社長は次のように述べられていた。

― 同じところにいると、同じような考えや色に染まる

だが、大型客船のような新プロジェクトに挑戦するときは、いろいろな人が交ざってワイワイがやがややらないといけない。―

 

これは、消費者との直接の接点のない重厚長大産業の最大の死角ではないだろうか。

BtoBの取引は得意としていても、BtoCになればまるでその中身は違ってくる。

豪華客船事業はまさにその視点を必要としていたのである。

 

 

つづく