30年早い!―ゴールデン街異聞2―Ⅲ

このいっぱしの口を聞く若造に、私がこう思ったのには理由があるのだ。

 

私や私の同窓の連中がこの店に通い始めた頃、常連の中ではもちろん一番年が若かった。(なにせ20歳くらいだったので・・・)

それに加えて、その後の世代間入れ替えがしばらくストップしていた時期があった。

 

つまり、なぜだか新陳代謝がしばらく進まない時代があったのである。

あまりに個性的な常連たちに恐れをなしてか、若い客がなかなか居つかなかったのだ。

 

その結果、私や私の同級生連中は、かなり長い間、常連としては一番下っ端のポジションを外れることができなかったのである。

 

とにかく、この店に通う常連客のインテリジェンスはかなり高かった。

そういった理由もあってか15年たっても20年たっても、私たち世代が、誰かに偉そうな口を聞くなどと言うのは許されない雰囲気がずっとあったのだ。

 

もし、私が15年たったころ先ほどのような口をたたいたならば、

「ほう、海江田、お前も随分偉くなったもんだな。」

と、先輩常連達に言葉でサンドバックのように袋叩きにされたことだろう。

だから、もちろんそんな生意気な口をきいたりは絶対にしなかったが。

 

しかし、近年通い始めた連中には平気でそんなセリフを吐く輩(やから)も出てきたということなのだ。

 

 

つづく