士気など上がるわけがない!―「経費削減」という施策について思うこと―Ⅲ

我々税理士は担当している企業の業績が思わしくないとき、まずは「経費削減」を提案することが多いのではないだろうか。

しかし、こういった助言には、少なからず問題もあるのではないか、というのが私の意見でもあるのだ。

 

そもそも企業活動の中で、「経費削減」という命題だけが常態化してしまったら、士気など上がるわけがないだろう。

社長を含めた社員みんなが、四六時中、どこを削ろう、何をやめようなどとばかり考えていたのでは、仕事に熱が入るはずもない。

 

自分が取り組んでいる仕事が、昨日より今日、今日より明日へと伸びていくんだ、と思えるからこそ人はやる気も元気も出るのではないか。

自ら企画し、考え、工夫した商材やサービスを世に問うてみる。

それがツボにはまれば、顧客による購入という支持につながり、ビジネスが良好な形で回っていく、これが健全な仕事の姿ではないのか。

 

商材やサービスの質が悪ければ、或いは時代のニーズに合っていなければ「売れない」という結果が待っている。

そこでまた考え工夫をしてやり直す・・これを繰り返して、自分のビジネスのクオリティを上げていく、というのが仕事に向きあっている醍醐味というものであろう。

 

残念ながら、「経費削減」という取り組みでは、この醍醐味を味わうことはかなわない。

ポジティブに前に進んでいくという回転運動の中からこの項目は外れているのだ。

 

もちろん、業績が良い状態が続くと、ついつい冗費の流出という悪癖に陥ってしまうのが人間の弱いところである。

企業活動の中にそんな要素があれば、それは正していくのが当然の行為である。

 

しかし、それが当然だとしても、必要以上に「経費削減」への取り組みが長く続くと、企業の体力そのものを奪いかねない

中でも、人件費の削減を大胆に実施して、人を減らし過ぎてしまうと、やや経済の状況が上向いて仕事が増え、業績を伸ばすチャンスが巡ってきても、それをものにするだけの人員が足りないということになりかねないのだ。

実際そういうことが起こっている。

 

というわけで、「経費削減」は即効性はあるものの、これだけに取り組み、あまり長く続けていると、全体の士気が下がるばかりか、企業の体力そのものを奪いかねないという危険性を含んでいる。

それになんといっても、面白くない、楽しくないのだ。

 

楽しく仕事を・・・

 

つづく