足で稼ぎ、頭で考え、手で書く―「働き方」について思うこと―Ⅷ

私たちが創業当時(1980年代半ば以降)は、世の中のデジタル化がまだほとんど進んでいなかった時代で、マーケティングリサーチの仕事は、ほぼすべてのデータを「足で稼ぐ」しかありませんでした。

その極めてアナログな方法というのは、具体的には以下のようなものだったのです。

 

―とりあえず、受注した案件の基礎知識が欲しいので、国会図書館とか八重洲ブックセンターなどに足を運んで、基本的な文献がないか調べる。

とりあえず、基本的な知識を身に着けたあと、どんなアンケートを作るか、誰にヒアリングすれば有効かなど、具体的な調査方法を整理した「調査設計書」を作成する。

この「調査設計書」をもとに「見積書」まで作成して、クライアントにプレプレゼンを行なう。

了解を得られたら、「調査設計書」にもとづいて、アンケートやヒアリングシートなどを作成し、現場調査を実施する。―

 

こういう極めてアナログなやり方で、まずは2方向のデータを取りました。

1つは、その案件に知見のある専門家とか経験者、場合によっては同業者に対するヒアリングです。

例えば、リゾート開発案件であれば、高級リゾートの体験者、高額リゾート会員権の所有者、場合によっては先行している同業他社などです。

もう一つは、そのリゾートを使うであろう消費者へのアンケートです。

どんなリゾート施設を望むかとか、価格はどれくらいが適当かとかを調べるいわゆるマーケティング(市場調査)というやつです。

 

特に難しかったのは、前者の専門家や同業他社へのヒアリングあるいはインタビューです。

というのは、まず、そういった対象(サンプル)を探すのが大変ですし、同業他社がライバルにノウハウを明かすはずもありません。

 

そういった困難を乗り越えて、こんなアナログな手法で、なんとかデータを収集していたのです。

まあこのように、マーケティングリサーチの仕事は、まずは取っ掛かりの部分から手間がかかるわけですから、超長時間労働への伏線は、もうこの段階から敷かれていたことになります。

 

データを収集してからの作業も当時は、基本的にアナログ的な処理に終始していました。

それは次のようなものでした。

 

ヒアリングした内容は、テープに取れた場合は(録音を拒否される場合もありますので)、専門の人にテープ起こししてもらいます。

会話というのは、そのままでは読み物になりませんので、リライトする必要があります。

 

当時はそれを、ヒアリング担当者(私はこれでした)が「手書き」で行ない、その手書き原稿をMac担当者がワープロ打ちをして、そのままPC内で報告レポート用にレイアウトまで行なって仕上げるのです。

デジタル化されていたのは、ほんの最後の一部分で、大半は足で稼ぎ、ひたすら頭で考え、手で書く、という何ともアナログな世界に終始していたのでした。

 

ただ、そのおかげでマーケティングリサーチに関する力量はめきめきとついていった、と思います。

それにしても、その間は、ひたすら超長時間労働を強いられる、という結果になったのです。

つまり、超長時間労働にならざるを得なかったのは、

「デジタル化がほとんど進んでいない世界でのアナログ的な手法しかなかった」

という要因によるものだったのです。

今は初めからワープロで打っていますが・・

 

つづく