「プロダクトアウト」と「マーケットイン」についてⅥ（おしまい）

ジョブス独特の切れ味は、そういったアイディアやちょっとしたものの中に「市場性」というきっかけをまず見つけ出すという感性の鋭さにある。

しかし、彼のさらにすごいところは、そこにとどまらない。

それらのアイディアが商品化され、一般の人々に届くまでの過程においても、彼のマーケティング感覚はいかんなく発揮されるのだ。

その証拠に、ジョブスは

「もっと使いやすく。素人にもわかるように。」

と口を酸っぱくして製品開発に指示を出している。

これは開発した商品のコンセプトの分かりやすさや操作性の簡便さが、市場に支持されるかどうか、即ち売れるかどうかに大きく影響することを彼が強く意識していたからに他ならない。

これはまさに、優れたマーケティング感覚と呼ばざるを得ないものである。

先述したように私も最初は、ジョブスはマーケティングを超えた天才なのだろうと思っていたが、実は最先端技術と一般消費者との間を取り持つ、極めてバランス感覚の優れたマーケティングの天才だったのではないだろうか。

いずれにしても、「プロダクトアウト」なのか「マーケットイン」なのかは、ビジネスが成功すればどちらでもいい話なのだ。

おそらく高いレベルにおいてはこの両方がミックスされた状態でことは進んで行くのだろうと思う。

おしまい