そんなに慰めて欲しいかⅠ
もう随分前のことであるが、若手経営者の集まりで講演をしたことがある。
私は、彼らが厳しい状況に置かれている経営の現場を今後打破していく一つの選択肢として、マーケティング的なアプローチについて語った。
極めて悪条件の中にあっても、マーケティング的なセンスをもって市場を俯瞰すれば何かしら突破口は見えてくるはずだ、と言いたかったのである。
講演が終わって懇親会になったときに、一人の若手経営者がお酒を注ぎにやってきた。
そこで彼は
「同じ税理士さんと言っても、人によって全然違う話をするんですね。」
と話し始めた。
どういうことか聞いてみると、私の講演の1ヶ月くらい前、その先生のお話があったそうである。
そこでその先生は
「こんな時代にあれこれジタバタしてもしょうがない。根性で頑張るしかない。」
みたいなことを言ったというのだ。
その内容について教えられたとき、私と随分違うことを言う人もいるんだな、と少し驚きながら聞いたのを覚えている。
「腹を据えて事に当たる。」という点に異論はないが、今の時代に戦略なき根性論のような話をする人がいたのには少々驚いたのである。
ただその先生は大変な成功者であった。
県内で所得番付上位のその人の話は、きっとそれなりに説得力があったのだろうと思う。
つづく