「最善の現状」を目指す=「現状の最適化」=「現状維持」―改めてPDCAについて考える―Ⅴ
外資系企業に所属していた頃、PDCAについて、使ってみたけどそれほどうまくいかなかった、と自らの体験を振り返るビジネスプロコーチの久野 和禎氏。
周りを見回してみても、PDCAをうまく回せている人はほとんどいなかった、とも述懐しています。
そして、その理由を、PDCA以外に有効な枠組みが提案されていないから、と断言しているのです。
とはいえ、PDCAがそれほど使いにくいという要因については、もう少しきちんとした分析をしてみる必要がありそうです。
PDCAのどこに問題があるのでしょうか。
その点について、久野氏は次のように述べておられます。
― PDCAが時代遅れになってしまった理由
PDCAの何が一番の問題かというと、本質的にPDCAは「最善の現状」を目指したものであるという点です。
このことを「現状の最適化」と呼んでいます。
PDCAの場合、「PLAN:計画」が、過去の積み上げからの計画になることがほとんどです。
過去からの延長線上ですから、想定しうる「最善の現状」が目指すところです。
「最善の現状」というのは最善ではあってもしょせん現状の一部ですから、そこを目指している限りにおいて、「現状維持」です。
これでは、クリエイティビティを発揮したり、イノベーションを起こしたりすることは不可能です。
何か新しいことをしたいのなら、現状の外の高いゴールを掲げる必要があります。―
うーん、なるほど、PDCAの「P:プラン」が、所詮、現状維持の範囲内に包含される、とは考えつきもしませんでした。
しかしこれはまさに、PDCAの本質を突いているといえます。
実を言えば私も、自分が取り組んでいる事業について、PDCAを前提とした経営計画を立てるとき、そんなに楽しくなかったことを覚えています。
何故だったのでしょうか。
それは、上記にあるように
「クリエイティビティを発揮したり、イノベーションを起こしたりする、といったことが、あまり入る余地がなかったから」
にほかなりません。
経営計画を立てるにあたって、お客さんには
「過去からの延長線上でものを考えないでくださいね。」
というセリフも、これまで随分使ってきました。
しかし、これを本当に実践すれば、そもそも本質的なところでPDCAとは馴染まないことになります。
つづく