普段の「会話」はインプットの場と割り切ってもいい―「聞き上手」になることは良き情報発信者への第一歩―Ⅲ
よくしゃべる、或いは「弁が立つ」といわれる経営者が、私がいうところの優れた「情報発信(アウトプット)者」ではない、という指摘は重要なポイントとなります。
というのは、経営者が発する「情報発信(アウトプット)」にはもっと大事な意味があり、普段の「会話」や「対話」の際には、自己主張よりもむしろインプットに徹して欲しいからにほかなりません。
ディスカッションやディベートといった特殊な意見のやり取りの場であれば話は別ですが、普段の「会話」はインプットの場、と完全に割り切ってもいいくらいなのです。
それが、取引先であっても出入りの業者であっても業界の付き合いであっても或いは部下であっても、会話は、基本的には自分にとって「情報収集」即ち「インプット」の場、と捉えるべきです。
もちろん会話はキャッチボールですから、何も言わないというわけにはいきませんが、こちらから発する言葉は的確で短いものにとどめ、できるだけ相手の話を聞くようにするべきなのです。
何故でしょうか。
それは、せっかくの情報収集のチャンスを、インプットに使わなければもったいないからです。
我々には、読書やニュース映像、テレビのビジネス特集など、インプットの場はほかにもいろいろあります。
しかし、それらは大抵の場合、すでにメディアのバイアスのかかった2次情報という位置づけになります。
そういったメディアによる加工がなされていない本当の生(なま)の情報は、フェイストゥフェイスによる直接の会話からしか得られないといっていいでしょう。
しかも、そういった場では、こちらが経営者という立場という点に配慮して、先方は頼まなくてもいろいろな情報を提供し、大事なことを教えてくれます。
こんな得がたいチャンスを、こちらが一方的しゃべることでつぶしてしまってはまことにもったいないのです。
しかし、他者との生の会話を、こういう風に意味のあるもの、と捉えている経営者は少数派です。
先述しましたように、こちら側がしゃべり過ぎることで、せっかくの貴重な時間を浪費している人の方がはるかに多いのです。
「よく聞く」ということは、簡単なようで難しい。
つづく