社員価値の向上や社員の成長に投資する―会社はだれのものかを考える―Ⅳ
「三方良し」的な考え方を継承してきたとされる日本の企業文化。
これに対して結構手厳しい批判をされる田中教授は、今後の日本企業にどのような提案や指摘をされるのであろうか。
アメリカがステークホルダー主義に移行してきた背景について、次のように指摘されている。
―アメリカでステークホルダー主義が出てきたのは、テック業界を中心とする構造的な人手不足が背景にあります。
エンプロイーエクスペリエンスあるいはエンゲージメント、つまりは本当に社員価値を重視しないと優秀な人材はもはや採用できないし採用してもすぐに離職してしまう。
だから社員価値の向上や社員の成長に投資することに、本気で取り組んでいるのです。―
エンプロイーエクスペリエンスとは
「従業員が、企業や組織内で行なわれる経営活動や人事施策などを通して醸成する経験価値を意味する」
となっている。
つまり、専門分野の経験値だけでなく、その企業の仕事に従事することを通じて総合的なスキルを上げていく、ということなのだろう。
エンゲージメントとは
「従業員一人ひとりが組織に愛着を持ち、従業員と企業が一体となってお互いに成長し合い絆を深める関係」
といった解釈になるようである。
以前、ロイヤリティ(忠誠心)という言葉がよく使われたが、この言葉の持つ一方通行性ではない、双方向性の良好な関係、ということを指しているのかも知れない。
いずれもアメリカの企業活動の中から生まれてきた言葉で、今後企業が目標としていくべき方向性を示していると言っていいだろう。
その背景にあるのは「人手不足」ということだから、ある意味、やむを得ず発生してきた考え方ともいえるのである。
とすれば、明らかに、「三方良し」的な考え方の「日本式のステークホルダー主義」とは、その出自が違うことになる。
それでも田中教授は、こういった流れを取り込んでいくべきと考えているようだ。
つづく
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5年後の我が社が「見える化」できてすごくよかった、というノウハウもありますよ。
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