コート、コート、コート・・・・コートについて思い出すこと24

アクアスキュータムの売り場を離れ、「サロンドシマジ」へとたどり着いた私に、島地親分が

「やあ、海江田さん、こちらへどうぞ。」

と、混み合うカウンターの一角を開けてくれる。

割って入るようにそのわずかな空間に我が身を滑り込ませ、先ほどの大いなる心の揺らぎを落ち着かせるために、まずはハイボールを注文することにした。

 

グッと1杯空け、2杯目3杯目と進んだ頃、タイミングを見計らって、島地親分に話しかける。

「島地さん、ご相談があるんですが・・」

「なんでしょう。」

「実は、何ともいえない、魅力的なコートに出会ったんですが、これがちょっと高価なんですよ。買ったものか、無理すべきではないのか、迷っているんですが・・・」

 

「買いなさい。」

間髪を入れない返事であった。

「いいものに出会ったときは迷ってはいけません。」

・・・それで終わりである。

島地さんの「買いなさい。」というシンプルなアドバイス。

「そうですよ。いいものは迷わず『買い』ですよ。」

と、私の話を聞いていた周りの男たちもはやし立てる。

 

そのとき私のグラスが4杯目に進んだ。

「サロンドシマジ」では、1杯ごとにコースターを変えてくれる。

その1枚1枚のコースターには、島地さんがそれまでの人生で掴んだいろいろな箴言が書かれているのだ。

 

島地さんは、客の顔を見ながら、その人とその場に相応しい言葉を記したコースターを選んでくれる。

4枚目のコースターには

「美しいものに出会ったら、迷わず2つとも買え」

と書かれていた・・・・

 

確かになあ・・・、何か欲しいものを探しているとき、「おっ、これはいいや!」というものに出会うときがある。

ところがそのすぐ隣に、それに負けないくらい素敵なものが鎮座していたらどうだろう? 

1つ買うのでもはばかられるような予算しかないときは、どっちにするか、迷いに迷うのではないだろうか。

 

ところが島地親分は「そんなときは2つとも買え!」といっているのである。

断捨離やエコといった今の風潮からは、真逆の価値観ともいえるが、もちろん、ちゃんとした理由のあってのことなのだ。

その辺の説明は割愛するけれど、とにかくそうやって島地さんは充実の人生を送ってきたらしい。

        この怪しい光に誘われて男どもはやってくる。

 

つづく 

 

【お知らせ】
海江田事務所は、少々不便な立地(かなり田舎なもので・・)です。
にもかかわらず(むしろそのために)極めて眺望の優れたリゾート施設みたいなオフィスです。
とても感じの良い(?)女性スタッフが淹れたてのコーヒーでおもてなしいたします。

これまでの税理士事務所のイメージを覆すような明るい雰囲気。

是非、一度遊びに来てください。
税務に限らず、経営全般のごご相談に応じます。
5年後の我が社が「見える化」できてすごくよかった、というノウハウもありますよ。
皆様のお役立てることを心掛けています。