ボトムアップパワーの衝撃―風通しの良い組織こそ21世紀のあるべき企業像では?―Ⅱ

職員の要請に従って、ようやく何十年ぶりかの値上げを決断した私。

これだけでも、かなりのエネルギーを要したことは間違いのないところである。

 

ところが、それで終わらなかったのである。

すかさず、彼らからの要望がさらに加わった。

 

「ついては所長に、その値上げに関する挨拶文、即ちお願いの文章を書いていただきたいと思います。

その文章を同封して、値上げのお願いの通知を発送しますので。

また、お客さんの中で、抵抗感をお持ちになる方がいた場合、必要とあらば、所長の同行を願って、所長の口から説明していただきたいと思います。」

 

全く、どっちが経営者かわからない事態になってしまった。

とはいえ、彼らの言い分にひとことの反論もない。

そうなりゃ、覚悟を決めて取り掛かるだけのことである。

 

私は丁寧な挨拶文を書き、大半のお客さんには郵送した。

これに加えて、この機会に顧問料がうちのコストに合わなくなってきていたお客さんについても、その分も含んで値上げをお願いすることになった。

これらのお客さんには、私が訪問して説明とお願いをすることになったのである。

 

そこで、担当者別に私が同行訪問するリストが作られた。

見てみると、想像以上にご訪問件数が多い。

 

「こんなに回るのかよ!」

と、私から悲鳴に近い文句の言葉が出る。

「仕方ありません。回っていただきます。」

と、職員の反応はクールなものであった。

 

「いいじゃないですか。たまには、先方の社長さんも所長にもお会いしたいでしょうし。」

・・・値上げの話に来た私に誰が会いたがるものか!と思ったが、文句を言ってもしょうがない。

訪問日程に従ってお客さんのところを回ることにしたのである。

 

 

つづく