事業を引き継ぐには「第2創業」の覚悟が必要―事業承継支援、というけれど・・・―Ⅵ
先代からの古い企業文化や古参の社員に対して、見直しや入れ替えが必要という点で、出発時において、それがハンディになることも多いのが、事業承継の辛いところでもあります。
私は、事業というのは常に前向きの姿勢で取り組むべきと思っています。
しかし、事業承継の場合、上記のような理由で、最低一度は後ろを振りかえらなければならないというステップを経ざるを得ず、初めからエネルギーを1点に集中できないというジレンマを抱えることになります。
その点、創業は何もないところから出発する、というハンディはあるものの、前だけを見て進めばいい、という点でシンプルです。
こんな風に、エネルギーの投入方向が1点に集中できるというのは、経営者にとって極めて有利な状況と言えるでしょう。
かなりの有形無形の企業資産を抱える老舗企業ならともかく、昭和の高度経済成長を背景に設立した企業であれば、2代目或いは3代目への事業承継に際して、相当な経営方針や方向性の見直しを考えて当然です。
おそらくそれは、その企業にとって「第2創業」と呼んでもいいくらいの大きな改革になるのではないでしょうか。
国はその施策の中で、事業承継支援として「事業承継税制」といった制度を整備し、事業の存続を後押しするとしていますが、あの制度の恩恵にあずかれるのはほんの数%にもならないでしょう。
あれは、相当条件のそろった優良な企業でなければ、ドンピシャ、とはいかないのです。
そういう意味では、「120万社も減ってしまう!」と慌てている割には、国の支援策はズレています。
経済の活性化に向けて、最も注力すべきは「創業支援」だと私は考えます。
というよりは、もっと活発に創業が行なわれる、ビジネス環境を創り出さねばならないのです。
つづく