移民がもたらす経済的利益は、負の影響によって容易に相殺されるー移民について考えるーⅤ

莫大な富が労働者から企業に移転している、と指摘するジョージ・ボージャス氏であるが、この論理はさらに次のように展開されていく。

 

― 開国すれば移民が多大な経済的利益をもたらすと主張するのは、移民を人間ではなく単なる労働者と見ているからにすぎない。

開国支持者が主張する移民がもたらす数兆ドルに上る経済的利益は、移民が受け入れ国の社会的、政治的、経済的な側面に負の影響をもたらす場合、容易に相殺される(経済的な大損失にもなりうる)。

開国による影響は、移民が労働力や生産性のあるスキルを持ち込むかどうかだけではなく、貧しい自国の発展を阻害してきたかもしれない制度的、文化的、政治的な慣習を彼らが持ち込むかどうかにも左右される。―

 

確かに、労働力が確保できなくなった国家においては、移民による労働の代替はすぐにでも欲しいところであろう。

しかし、安易な移民の導入は、上記のように極めて危険な要素も含んでいるのである。

 

特に「貧しい自国の発展を阻害してきたかもしれない制度的、文化的、政治的な慣習を彼らが持ち込むかどうか・・」という点については、相当気をつけておかねばならないだろう。

こんなものが持ち込まれたならば、健全だった国家運営に重大なマイナス要因を付加することになる。

こういった事態は何としても避けたいところである。

 

というのは人間の持つ保守性は、自国の発展を阻害してきた慣習とわかっていてもそれを修正することは極めて困難だからである。

特に移民が特定のコミュニティといったものを形成した場合、それらの慣習は、そのままの形で持ち込まれることが多いのである。

 

 

つづく