莫大な富が労働者から企業に移転しているー移民について考えるーⅣ

短期的に社会保障費が増大する、というジョージ・ボージャス氏の論理展開は、当然反発も予想される。

その点に気を配りながらも、ボージャス氏は次のように述べておられた。

 

―少なくとも短期的には、移民余剰による経済的な利益は移民に給付される社会保障サービスの財政負担により相殺されると言ってもおそらく暴論ではない。

過去数十年間に米国に移住してきた外国人の規模や技能水準を考えると、移民の経済的な影響は均せばせいぜい差し引きゼロだ。

ただその裏では、莫大な富が労働者から企業に移転している。―

 

なるほど、アメリカのような移民大国においては、上記のような計算式が成り立つのであろう。

技能水準がそれほど高くなく、むしろ社会保障サービス給付への移行が危惧される人口が、バカにできないほどの数であれば、これは国家にとって深刻な問題にならざるを得ない。

 

というような深刻な事態をよそに、この矛盾によって生まれた富を一部の企業が独するとなれば、これは見逃すことはできないだろう。

アメリカに想像を絶するような富裕層が生まれるのは、こういった経済環境をバックにしているということになる。

 

これが、その富裕層以外の誰の目にも不健全に映るのは、無理もないところである。

逆に富裕層は、大衆を敵に回してでも、このポジションをなんとしてでも死守しようと画策するであろう。

 

トランプ大統領は、自らはその富裕層側に入っているはずであるが、移民の排除を主張している。(アメリカには、トランプ大統領の比ではない超々富裕層も存在しているようだが・・・)

こういったところが、様々な問題を抱えているように見える人物であるにも関わらず、一定の支持を受け続けている理由なのかも知れない。

 

 

つづく