ドラマ「集団左遷」に思う―テーマ設定に無理がないか?―Ⅳ(おしまい)
ここで提示されようとしているものの裏側にあるのは、実は銀行業界だけの問題ではない。
それは日本経済が抱える大きな課題ではないか?といった社会的な背景を考えたとき、銀行の1支店を救うの救わないので済むような話か、と思うのだ。
今や銀行は、その存在そのもののあり方が問われている。
高度にネットワークが網羅され、リアルな通貨による取引そのものが、庶民のショッピングの現場からさえも消え去ろうとしている世の中なのだ。
この現金決済がほとんど消滅しかねない近未来において、
「リアルな店舗を構えて、そこで多くの人間が働いて、間接業務的な処理をしている。」
という、今の銀行のビジネスモデル自体が、そのうちいらなくなるのではないか、という岐路に立っているのである。
そんな将来像がわかっているから、各銀行は未来に向かって、業務全体の転換を図っている最中だろう。
このドラマでは支店網の統合整理という形でそれを表しているが、その程度で済む話ではないはずだ。
現に銀行の中途退職者率は上昇の一途で、銀行の将来を悲観した人間は泥船から逃げるようにこの職業から離れていっている。
新卒者の人気企業ランキングからも、とうの昔に金融機関は消えてしまった。
そういった中、従来のビジネスモデルに固執して、浪花節的に経営陣の方針に逆らって現状を守ろうというストーリー展開は、傍から見ていても無理があるんじゃないかなあ・・・と思うのだ。
今後ドラマがどんな風に展開していくのかまだわからないが、義理や人情がらみの、旧来の価値観の方が人間味があって素晴らしい・・・といった、皮相な結論だけは勘弁してほしい、と思うのである。
うちの金融機関対策ミーティング風景
おしまい