既存の手法が使えないにもかかわらず、新しい手法はまだ手つかず―BtoB企業の現状に学ぶマーケティング―Ⅷ

これまで「守り」に徹してきた日本のBtoB企業、その特性は次のような現象として顕在化します。

庭山教授は次のように述べておられます。

―日本のBtoB企業は、既存の顧客に既存の製品・サービスを売るのは得意です。

ところが既存顧客に対しても、新しい製品やサービスを売ることは得意ではありません

既存顧客といっても大企業であれば、いつもとは違う事業所や場所に行き、会ったことのない人と会わなければ新製品の商談は作れないからです。―

 

この指摘には、いささか驚かされました。

「え、同じお客さんところでも、新規の営業は不得意なの!?!」

と、思ったからです。

 

いくら、以前から引き継いできた顧客に強かろうとも、少し目先を変えただけで対応できないとは随分脆弱だなあ・・・と。

これはちょっと情けない感じがします。

つまり、前述のように、

「これまで続いてきたものを守るのは得意だけど、未知の未来に対して開拓していくのは、既存顧客の企業内であっても苦手」

という、ことになるからです。

 

これは、ただ新規へのチャレンジが苦手、という「マインド」の問題よりも、

「既存の営業スタイルを変えてはいけないのでは・・・」

という「配慮」によるものかもしれません。

だたし、弊害として考えられるのは、こういったことが続けば、本当に新規へのチャレンジ精神が失われるのではないか、ということです。

 

こういった私の思いに符合するように、庭山教授は次のように指摘しておられます。

―既存の製品やサービスで新しい顧客・市場を開拓する際にも既存顧客に対する営業手法は使えません。

一緒にゴルフに行ったり、お酒を飲んだりといった営業は既存の顧客を守るための手法です。

既存顧客でも新規顧客でも海外でも、新たな市場を開拓するにはその市場で商談をつくるマーケティングが必要になりますが、そのノウハウを日本のBtoB企業はほとんど持っていないのです。―

 

この指摘が、今回のテーマの最もコアな問題点を表現しているのかも知れません。

つまり、既存の手法がすでに使えない、ということ、にもかかわらず、新しい手法はまだ手つかず、という深刻な事態である、ということなのです。

 

 

 

つづく