真実を述べ、じっくりと伝えるべきもの―顧客を魅了する会社の物語を考える―Ⅲ
・広告宣伝との違い
「ストーリー」といっても、なにも会社の成り立ちから現在までをダラダラと述べる、という意味ではありません。
会社の何か特別な出来事や、特徴のある製品或いは商品などについて、その前後のエピソード、完成秘話などを一つのお話として完結させるものです。
そうすると、
「そういったことは広告宣伝の中で表現できるのではないか。広告宣伝とどこが違うのか?」
という疑問が出てきます。
「むしろ広告宣伝の役割ではないのか?」
と、いう声も出てきそうです。
広告宣伝とストーリーを伝えていくという行為には、いったいどんな違いがあるのでしょうか。
それぞれの特長といったものを分析しながら考えてみたいと思います。
そもそも、広告宣伝というのは、原則その商品やサービスのマイナス面は伏せるものです。
プラス面の特長やイメージのみを伝えようとします。
そこに通常ネガティブな情報は含まれないのです。
一方、「ストーリー」はむしろ逆と言っていいくらいです。
欠点やマイナス面をさらし、そこからどうやって逆転したのか、這いあがったのかというプロセスが重要な要素となります。
いいところばかり強調する訳ではないのが「ストーリー」の特徴なのです。
また、広告宣伝は、効率や効果といったものを意識して行なわれるものです。
際立ったデザインや鋭く短い宣伝コピーで、消費者に強く印象付け、購買に繋げなければなりません。
これによって、広告媒体の選考にも神経を使う必要があり、広告予算との兼ね合いが重要になってきます。
これに対して、ストーリーには効率はあまり関係ありません。
短く鋭いものである必要などなく、じっくりと伝えるべきものなのです。
効果については多少意識はしますが、よく思ってもらうことが目的ではないので、真実を述べることが求められます。
つづく