家電メーカーの分析により日本企業の問題点を洗い出す―その原因と解決策―Ⅲ
更に長内教授は、日本メーカーが、家電で韓国、中国、台湾勢に対して劣勢であることに対して次のように述べておられます。
― 21世紀に入って、家電業界でデジタル化が一気に進みました。
部品を調達すれば、簡単に一定の品質の製品ができる。
安い部品を、安い人件費で効率よく組み立てるのです。
韓国のサムスン電子は、迅速な判断で大規模な投資をしました。(中略)
技術を高めることと、技術以外の部分で何をするべきか、うまくバランスをとった。
全体の戦略を描き、大胆な経営判断で、成功につなげた。
しかし、日本の企業は、技術を過信するあまり、デジタル化に対応する「戦略」がありませんでした。
技術が強すぎたために、技術に頼ってしまった。
あの手この手で戦略を考えることができなかった。―
このフレーズのデジタル化というのはコモディティー化と読み替えることもできるのではないでしょうか。
コモディティー化の波は恐ろしいもので、規模と量の論理によって、津波のように市場をさらっていってしまいます。
サムスン電子の経営戦略、ビジネスモデルが、未来永劫正統なものであり、通用し続けるとも思えませんが、一時期日本企業のそれを凌駕したことだけは確かです。
日本企業には、これを超えるだけの「次なる戦略」が必要なのではないでしょうか。
「強すぎる技術」がなにも「悪」という訳ではありません。
経営全般を俯瞰した時に「技術の強さ」が、強力なツールであることは間違いないところです。
この突出したツールを戦略的に活かしきれなかったことに、日本企業の敗因があると言っていいのでしょう。
つづく