田舎から都会へ:映画「ブルックリン」を鑑賞して―少々辛口の地方批評―Ⅰ
「ブルックリン」という映画があります。
2015年、アイルランド、イギリス、カナダ合作の映画で、主演の人気若手女優シアーシャ・ローナンが第88回アカデミー賞で作品、脚色、主演女優賞の3部門でノミネートされた作品です。
アイルランドの片田舎からニューヨークのブルックリンに、働くために移り住んだ若い女性が、慣れない都会に戸惑いながらも、前向きに生きて資格を取ったり恋人ができたりと成長していくストーリーです。
ところが、彼女がようやく都会の生活にも慣れた頃、仲の良かった姉の突然の死をきっかけに故郷に帰ることになります。
姉の葬儀(結局、間に合わなかったのですが・・)と残された母の様子を見るために、一時帰国するだけだったはずが、地元の経営者にちょっとした仕事を頼まれたり好きな人ができたりして、ニューヨークへ帰ろうか故郷に残ろうか迷い始めます。
もともと聡明な彼女は、都会で積んだ知識や経験が田舎でも重宝され、頼りにされるのです。
そして同じ頃、昔馴染みの男性とも親しくなっていきます。
そんなとき、上京前に働いていたとき雇い主だった商店主の老婦人に呼び出されます。
昔から底意地の悪かったこの老婦人に
「あなた、○○(田舎の青年の名前)と付き合い始めているらしいじゃない。いいのかしら。私の知り合いがニューヨークにいて、あなたが向こうで男がいるってことを私は知っているわよ。」
と告げられるのです。
つづく