贈答文化を考えるⅡ
さて、それから数十年がたち、平成に入ってから私は家族と一緒に東京から鹿児島へと帰ってきた。
すでに税理士としての資格は持っていたので、父の事務所に管理職として入所したのである。
当時、その後贈答文化がどうなったのか、などということは特に意識もしなかったが、多少の変化はあったのかも知れない。
ただ、ある時、これまでの贈答の習慣に対して明確なメッセ―ジが発せられる出来事があった。
事務所で取引していたソフト会社から「虚礼廃止のお願い」という文書が届いたのである。
そこには「今後はこれまでのような、やったりとったりの習慣はもうご無用」的なことが書かれていた。
このとき初めて、それまでの贈答文化に変化が起きつつあるな、と感じたのである。
そう意識して、父の周辺を見直してみると、心なしか昔に比べてお中元、お歳暮の類はやや減っているようにも見えた。
私に関しては、元よりそれほど贈答品のやり取りの習慣はなかったので、かつての父の家のようなこと(大量の贈答品)にはなっていなかった。
確か、一度だけ事務所でも虚礼廃止のお願いの文書は配布したような気がする。
そう何回もしたわけではなかったが。
つづく