たらちねの・・・・Ⅲ(おしまい)

今でもはっきりと覚えているのは、その参考書の中で取り上げられていた短歌である。

それはこういう歌であった。

 

のど赤きつばくらめ ふたつ梁(はり)にいて たらちねの母は死にたまふなり

 

今調べてみると、歌人斎藤茂吉が母親の死の床に立ち会ったときに詠んだものであり、名歌として知られている。

 

確か、参考書の中ではその時の深い悲しみや、それを表現する歌人の手法などについてかなりディープな解釈、解説が行われていた。

それは相当高尚なものだったように記憶している。

 

とにかく、こういった歌や詩などを教材として、受験生レベルとしては高すぎるのではないか、と思うくらい格調の高い解説が、その受験参考書の中には綴られていた

 

私は受験参考書としてよりも、文学に深く関わる上での一つの指導書としてこの本に接していたのかも知れない。

確かに、「お勉強」といった感じで、受験参考書としてこの本に向き合ってはいなかった。

 

まあ、私の国語がよくできたのはその参考書のせいだけではないとは思うが、ふとそんなことを思い出したのでちょっと書いてみた。

その後、インターネットで調べてみたら、この受験参考書は名著であるが故か復刻されたそうである。

早速買ってみるつもりだ。

 

 

 おしまい