マフラー雑感Ⅰ
冬はマフラーを巻く機会が多い。
最初にマフラーを意識したのは、大学を出て新宿の会計事務所で働いているときのことだった。
冬、スーツの上にコートを羽織っただけの通勤は、特に防寒対策もなく寒かった。
事務所から新宿駅までの行き帰りには地下街を歩くことが多かった。
夏も冬も温度が一定なのでしのぎやすかったからだ。
冬のある日、その地下街にある小さなメンズブティックのショーウィンドーでそのマフラーを見た。
確か基本色はネイビー。
表が千鳥格子のチェック柄で裏がネイビー無地のリバーシブル使用だったと記憶している。
見た目、極めてオーソドックスなもので、落ち着いたその佇まいが何故か気になった。
ただそれまでマフラーなんて巻いたことがない。
学生時代、ニットのものはちょっとだけ使ったことはあったが、ショーウィンドーの中のそれは起毛したウール素材で、まるで違う存在に見えた。
今考えれば大して高価なものでもなかったのだろうが、当時安月給の身としてはちょっと高級品に思えたのだ。
「あれを首に巻いたら、きっとあったかいんだろうなあ。」・・・・ある日思い切ってその店に入った。
つづく