サービスの対価Ⅱ
この経営者は、もともと私のクライアントではなく、その時点でも何の金銭的な契約も結んでいなかったので、この行動にはかなり驚かされたことを覚えている。
知り合ってすぐの頃は、意気投合して「積極的でなかなかやり手の経営者だなあ。」と、思っていたが、そのうち怪しくなってきた。
度々うちに出入りはするが、一向にビジネスの話になる気配がない。
いろいろと私のノウハウやアイディアを聞いていたのが、ある日「分析して欲しい。」と先述のように決算書を持ち込んできたのである。
これにはさすがに私もいささか呆れてお断りした。
実を言えば、こういったタイプの経営者は一人ではない。
今まで何人かの経営者にこれに似たような対応を受けたことがある。
いずれも、ご自分の会社の経営内容に関して、いろいろと聞きたいことがあったらしく、それまで私とかなりのやり取りを行なっている。
なかなかこちらの仕事にならないので、途中顧問契約の話を持ちかけたりもした。
しかし結局、契約には至らず、そのうち「もう聞くこともない」と思ったのか、いつの間にか出入りもしなくなった。
私とあまりの感覚の違いに、かなり呆れさせられたケースである。
つづく