巨人石津謙介のことⅢ

しかし、様々な角度から石津謙介の人となりを知れば知るほどその影響力の大きさに驚かされる。

つまり、大きな事業、会社を残したという目に見える形で彼の遺産が残っている訳ではないが、改めてよく見ると様々な分野に浸透している彼の影響力の大きさには注目せざるを得ないところがある。

 

その影響力というのはズバリ風俗文化である。

つまり、経済や政治といった直球の分野ではなく、いわば世の中の余力の部分である。

人生の彩(いろどり)の部分と言ってもいいかも知れない。

 

この点について、著者の花房氏は次のように書いている。

 

― 石津がもたらした「アイビー」という文化は、さらにさまざまなサブ・カルチャーを生み出していく。

洋服がファッションとなり、若者に文化として受け入れられると、第二の石津謙介、第二の森英恵を目指す若者が続出。

その中から、山本寛斎、高田賢三、三宅一生という国際的なデザイナーが誕生する。(中略)

メディアの世界では「平凡パンチ」「週刊プレイボーイ」を生み出し、日本における現在のアメリカン・カルチュア―の礎となり、(中略)「ポパイ」「ホットドッグ・プレス」という、新しい若者文化を生み出した。(中略)

橋本龍太郎、小泉純一郎といった、かつては不良の代名詞と言われたボタン・ダウンシャツを身につけた宰相が登場し、石津が提唱した「カジュアル・フライデー」を端緒とする「クールビズ」、「ウォームビズ」など、政府がファッションに介入することになる・・・・。―

 

 

 

つづく