ブルーオーシャン、レッドオーシャンと云うけれど
どちらも経験した
少し古い話になりますが、ビジネスを始める際に、よく使われる言葉に、ブルーオーシャン、レッドオーシャンという言葉があります。
ブルーオーシャンはまだ市場が成熟しておらず、これからの伸びしろがうんと期待できるビジネスを指し、一方、レッドオーシャンは既に市場が成熟し切っており、競合が多すぎて参入が難しい、というときに使われる言葉です。
ということは必然的に目指すならブルーオーシャン。他人(ひと)が参入していないまっさらなマーケットを狙えば成功の確率が高い、という話になります。逆にレッドオーシャンは競合他社が多く、遅れて参入したところで成功のチャンスは少ない、ということになりますね。
しかし、私の経験上、これってどうなんだろう?と思うことがよくあります。
というのは、私自身がブルーオーシャン、レッドオーシャンどちらも経験しているからです。
ブルーオーシャンで成功を掴む
まず、私は友人と一緒に日本がバブル経済へと突入していく少し前に東京で会社を設立しました。業種としては、マーケティングリサーチの会社で、まだあまり競合する企業がなく、最初は苦労したものの、途中からバブル景気にも乗っかって、かなり面白いビジネスを展開することができました。バブリーな感じの濡れ手に粟的な儲け方ではありませんでしたが、かなり順調に業績を伸ばしたことを覚えています。
当時、我々の会社が提供していたマーケティングビジネスは、リサーチだけではなく、提案まで含めたサービスを行なったためクライアントの評価も高く、かなりの収益を出すことができたのです。あの頃も、マーケティングリサーチ、いわゆる市場調査だけ行なって、その結果のみを集計し納品する他社はいくらでもありました。
しかし、我々のようにそのデータを基にしてさらに提案まで踏み込む会社はありませんでした。つまり、競合他社というのはそんなに存在しなかったことになります。そのレベルまで行くとなると、もはやシンクタンクの領域で、一般のリサーチ会社で手掛けるところはほとんどなかったのです。
このとき我々がチャレンジしたのはまさにブルーオーシャンと言えたのではないでしょうか。そして、その土俵で一定の成果を収めることができたのです。
さてその後、バブルの崩壊ということもあって、一定の成功を収めていたマーケティングビジネスの会社も経営が厳しくなったため、私は自らをリストラし田舎に帰ったのでした。(会社自体は残りました。)
レッドオーシャンで気づいたこと
田舎では父の仕事を受け継いで、会計事務所の2代目として経営に当たることになりました。税理士として顧問契約を結んだ顧客の税務会計部門の顧問を担うわけです。
その前から予測はしていたことでしたが、実際この仕事に就いて見て感じたのは、この業界は完全なレッドオーシャンだな、ということでした。税理士は全国に8万人ほどいて、そのうち半分以上が自分の事務所を開業しています。つまり、全国には数万の会計事務所、税理士事務所があって、当時急激にその数を減らしつつあった中小企業を取り合う形になっていたのです。
父はある程度の顧問先を確保しており、すぐにどうということはありませんでしたが、何も手を打たなければ厳しい状況になることは予想できたのです。
私は直ちに業界の将来について分析に入りました。そして次の5点に気が付いたのです。
1、既に世の中によく知られた仕事なので営業の際、説明する苦労はない。
2、ただし長く続いた業種のため全体が保守的になっている。
3、ほかの業種で当たり前に行なわれていることが実践されていない。
4、現代的なテクノロジーをいち早く取り入れるメリットのある業種である。
5、設備投資金額の桁が他業種に比べて格段に少ない。
以上のような点でした。
これがレッドオーシャンと言われていた会計の業界に対して私が感じたことだったのです。
それぞれの長所と短所
さて、上記5つの中で、私がブルーオーシャンと書いたマーケティングビジネスと共通するのは4と5であり、1から3は真逆でした。
つまり、私が手掛けた二つの職種はブルーオーシャン、レッドオーシャンと言っても、逆の性質もあれば共通のところもあったのです。この気づきを通じて私が思ったのは、事業の成功に関して、あまりブルーオーシャン、レッドオーシャンとは関係ないな、ということでした。
確かに東京での起業した私たちのマーケティングビジネスは希少性がありうまくいったのですが、その良さをわかってもらう点についてはかなり苦労しました。それはそうですよね。ブルーオーシャンということは、人にまだあまり知られていないからそうなのであって、その最初の理解を得られるのは営業をかけていてもかなり難しかったことを覚えています。
逆に税理士事務所というのはよく知られた存在で、わけがわからないということはありません。先方が必要と感じたならば、契約自体はそれほど難しいものではないのです。ただ、先述のとおりレッドオーシャンで競合の数は多い。
私はどっちの立ち位置にいたとしても、成功の要因は一つだと思いました。
成功を掴めるかは創意工夫次第
成功の要因、それは、それを仕掛ける経営者のやる気と情熱です。「なんだ!そんな結論かよ!」と思われるかも知れませんが、これ以外に思いつきません。
ブルーオーシャンにおいては、レアなビジネスですので先述のように顧客の理解を得るのに苦労します。そこでどうしたらうまく伝わるか、わかってもらえるかに苦労し試行錯誤するわけです。この試行錯誤、即ちトライ&エラーをいかに我慢強く続けられるかが勝負の分かれ道だと思います。
一方、レッドオーシャンの方はよく知られた業種ですので基本的な説明の必要性はありませんが、その他大勢の同業他社とどこが違うのかを明確にしなければなりません。
ところがここを手掛けようとすると、その同業他社たちから奇異の目で見られます。そんなことこの業界では聞いたことない、というわけです。ここでめげずにその方針を貫けるかがやはり勝負の分かれ道になるのです。
つまり、ブルーオーシャンにしろレッドオーシャンにしろ、その難しさと突破するための戦略はそれぞれに存するということなのです。それを克服し勝ち残るには、経営者のめげない気持ちと言いますか、諦めないハートと言いますか、そのおかれた立場での創意工夫、チャレンジ精神が必要だということです。
ブルーオーシャン、レッドオーシャンそれぞれのマーケットで戦ってきた私が今思うのはそういうことなのです。
事務所の働く風景、以前に比べてかなりゆったりです。

