追悼アラン・ドロン―永遠のヒーローだった―

大スター逝く

とうとう、あのアラン・ドロンが亡くなった

いつかこの日が来ると覚悟してはいたのだが、正直ショックは隠せない。

現在、私は72歳。アラン・ドロンは享年88歳。わずか16歳しか離れていなかったという事実に少し驚かされる。

それにしては、彼は遙かに遠い大スターだった。(当たり前ですが)

私が20代から30代、40代に至るまで、彼は私にとって最もカッコいいスターであり続けた。

彼の映画俳優としての全盛時代は1970年代までだろうから、現役で最も活躍したのは、私が30歳を迎える前までの話である。

しかし、「太陽がいっぱい」「冒険者たち」「サムライ」の三作は、70代を迎えた現在もハードディスクに保存してときどき観返しているのだ。

「冒険者たち」の1シーン

 

常にナンバーワンだった

これまでも、このブログでアラン・ドロンに関する私の感想みたいなことは何回か書いてきた。俳優として、名作といわれる映画に何本も出演した男性スターは他にも数多くいるだろう。ジャンポール・ベルモンド、マルチェロ・マストロヤンニ、スティーブ・マックイーン、ポール・ニューマン、数え上げればきりがない。いずれも私が好きな俳優たちである。(既にみんな鬼籍に入ってしまったが・・)

しかし、アラン・ドロンは私の中でナンバーワンであり続けた。

カッコイイ、カッコ良すぎる存在として、私の意識の中に君臨し続けたのである。

何故そんなにもファンであり続けたのだろうか。

 

年を重ねてもカッコイイ

その一つの要因に、年齢を重ねてからも大きく崩れることはなかった、ということがある。

特に、彼のような美男子俳優は、晩年、見る影もなく衰えてしまうということは得てして多いものである。

しかし彼は、そんな姿をついぞ見せずに終わったのだ。年を重ねたあとも、年を重ねたなりにずっとカッコ良かったのである。こんな俳優は珍しい。

ただ、その人格や人生そのものについては、決してお手本にすべき人物とは言えない。

かなりダークな部分も併せ持った人だった。

だから彼は、犯罪者役がよく似合っていた。彼の出世作である「太陽がいっぱい」では、友人殺しの青年を演じている。「冒険者たち」の彼も、犯罪者ではないが、無鉄砲な青年役を演じている。

「サムライ」のアラン・ドロンはまさにはまり役だったと思う。寡黙で非情な殺し屋役を見事に演じ切っていた。

「サムライ」の1シーン

 

サムライとして死にたい

晩年のインタビューで「私はサムライとして死ぬのだ。」みたいなことを言っていたところをみると、彼の実像においても映画「サムライ」の主人公役に、何か通じるものがあったのではないだろうか。そういう影の部分が彼の魅力でもあったのだ。

彼がそういった陰影の深い人物でなかったならば、前述のようにただただ劣化していくだけの二枚目俳優に過ぎなかったかも知れない。かといって、超個性派俳優というわけではなく、ギリギリの端正さ、品の良さは保っていた。なので、ジャック・ニコルソン、ジョン・マルコビッチやゲーリー・オールドマンといったタイプの俳優が見せる狂気の塊のような役を演じることはなかったのである。

トレンチコートが似合いすぎる

 

食われ気味にかかわらず

こんな風に、私としては非常に好きな俳優だったのだが、映画の中の評価に関しては少し微妙な点もある。というのは、共演者に大物俳優や、アクの強い個性派俳優を持ってきたときは、ちょっと食われ気味のところもあったからである。

先述の「冒険者たち」では、親友役のリノ・ベンチュラの方が渋い魅力を放っていたし、「シシリアン」では大物俳優ジャン・ギャバンに完全に食われていた。「仁義」では、やはり仲間役のイヴ・モンタンの方が、圧倒的な男の色気を発揮していたように思う。

いずれの俳優も、アラン・ドロンに比べればお世辞にも美男と呼べる人たちではなかったが、映画の中では明らかに彼よりも光っていた。ただ、アラン・ドロンはそんな事実もわかっていたらしく、自分がすでに大物俳優だったにもかかわらず、そういった個性派、演技派俳優たちとの共演も全く厭わなかったようだ。

 

とうとうその日がやってきた

彼の死に関しては、既に多くのネットニュースが取り上げているし、今後、雑誌などメディアでも特集が組まれたりすることだろう。そんな流れに乗じて、今回このような一文を書いたと思われるのも、長年のファンとしては少し癪である。

冒頭述べたように、アラン・ドロンに関しては、これまでも何回か書いてきている。身体の具合が悪いと聞いてこんな日が来るだろう、と覚悟はしていた。

そうなったら、きっと追悼の文章を書くだろうな、とも思っていたのだ。そして、とうとうその日がやってきた。

やはり、他の俳優が亡くなったときよりも喪失感は大きい。安らかに眠られんことを心から願いたい。

 

 

これは私のトレンチコート姿。

本文とは何の関係もないですけど。