僕、優秀過ぎちゃって・・―バーカウンターにおける「意識高い系」は「粋」に通じるか?!?―Ⅰ
私は「近頃の若いもんは・・・」という言葉は、今まで使わずに生きてきたと思っているし、実際そんな風に思ったこともない。
また「女って奴は・・・」といった意識もないつもりだ。
つまり、ジェネレーションや性別で何かを決めつけるというのは、もともと性に合わない。
なので、そういう思考や行動は選んでいないはずである。(とはいえ、身近な人たちの証言をとってみたら、「えー、違うんじゃないの。」なんてね。まあ、どうなるかわかりませんが・・・)
時代の変遷が激しい中、デジタル系の操作など、何かと事務所の若いスタッフに頼る場面も増えており、彼らに教えてもらったり手伝ってもらうことも多い。
そんなこんなで、常に若い彼らには感謝しているのだ。
よく使われる事例として、古代エジプトの文書にも「近頃の若いもんは・・・」という表現が出てくるという。
つまり、いつの時代もジェネレーション間の対立というか、理解し合えない溝というのは存在したことになる。
冒頭に書いたように、私自身はジェネレーションギャップというものはあまり気にしていないし、そこでひどく悩んだという経験もない。
つまり、ここの部分において、彼らにこちらから苦言を呈するということはそんなにしてこなかったつもりである。
さて、前置きが長くなってしまった。
とまあ、そんな私ではあるが、近年少し気がついたことがある。
それは世間でよく言われている「意識高い系」というのはこういうことを指すのか、ということである。
年配の人に向かって「こいつ意識高い系だな。」と思うことはないだろうし、そういう使い方はしないはずだ。
ということは、「意識高い系」というのは、ある程度若い世代に向かって発せられる言葉だろうと思う。
そこで、近年出会った或る若者たちのことを思い出した。
それは、行きつけのバーカウンター、つまり、酒の席で何回か経験したのだが、たまたま話をした隣の席の若い男性がこんなことを言っていたのである。
「僕は仕事ができる方なので、職場ではちょっと浮いた存在なんですよ。他がついてこれないというか、理解が追い付かないというか・・・」
また、こんな若者もいた。
「僕の場合、ちょっと優秀過ぎるんで、上司とどうも馬が合わなくて・・・仕方がないので、仕事、いつも勝手に進めちゃっていますけど。」
さらに転職したという若者はこんなことを言っていた。
「あのまま、組織に残っていれば、今頃役職にも就いていたでしょうし、年収もかなり上がっていたとは思います。まあ、今の仕事がやりたかったので・・・」
フムフムなるほど、と聞いてはいたが、少し驚いた覚えがある。
「えっ、自分からこんなこと言うんだ!」と。
いずれも30代くらいの年齢であった。
そんな彼らの発言を聞きながら、自分の30代の頃を思い出してみた。
『俺はとてもあんなことは言えなかったなあ・・・。全然自信もなかったし、実際そんなに仕事もできなかったしなあ。』
と心の中で思う。
別に謙虚なわけでも何でもない。
その通りだったから仕方がない。
あの頃、どっかで虚勢を張らなくちゃならない場面があったとして、ああいうセリフを発することができただろうか、と思うと、『いやいやとても無理だ。』という結論しか出てこない。
行きつけだったバーカウンター。この店はもうありませんが・・・
つづく