前例のないことは・・・・―「働き方」について思うこと―Ⅲ
今から35年ほど前、東京で同世代の仲間たちと起業した私は、バブル期の超好景気ということもあって、働きに働きました。
私たちが始めたマーケティングリサーチの仕事は、受注が引きも切らず、顧客である大企業から次々と発注される新しい案件に日々懸命に向き合っていたのです。
当時、私たちに振られた案件は、いずれもレアケースの大型プロジェクトのようなものが多く、中には自分たちの能力をはるかに超える難しいものもありました。
能力的に届かない分、身体を張って頑張ってなんとかこなすという、能力を体力でカバーするようなやり方で取り組んでいました。
これが長時間労働を余儀なくされるような働き方になる一つの要因だったのです。
そんな働き方になったもう一つの要因は、前例のないことをやっていたから、ということになります。
前述のように、私たちに仕事を振ってきたのは優秀な社員を抱える大企業でした。
にもかかわらず、優秀であるはずの彼らがそれを苦手としたのは、まさに「前例のないことをやらされていた」からにほかなりません。
何故彼らはそういった案件に弱いのでしょうか。
それは、以下のような理由によります。
メーカーにしろ流通にしろゼネコンにしろ、そこに入社する社員は、あらかじめその企業の仕事の内容を想定して入社してきます。
そして、おそらく大枠では想定していたような業務であり、その範囲内で仕事を覚えていくことになると思います。
ところが、バブル経済の頃は、金余り現象の中で、各企業が全く畑違いの業種に進出することも多かったのです。
この新しい分野へのチャレンジも、大勢いる社員の中の誰かが担当しなければなりません。
そんな立場になった途端、優秀な社員であるはずの彼らは、戸惑うばかりでなく対応力すらも弱くなるのです。
それは大抵のテーマは畑違いであるばかりでなく、前例のないことが多かったからにほかなりません。
つまり、これらの案件は、本筋である自分の会社の基本的な業務からは外れることになります。
そうなると彼らは、気持ちの面で萎えてしまうのか、チャレンジ精神を発揮するどころか、もともと高いはずの普段の能力すら発揮できなくなってしまうのです。
未知なるものへのチャレンジは・・・・
つづく