「数値計算」と「データ保存」の劇的変化―我々の仕事はどう変化していくのか?「これまで」と「これから」を考える―Ⅶ

さてここまで、「英語の5W1H」を使って、私たちが提供してきたビジネスの「やること(内容)」と「やり方(方法)」を振り返り、それぞれの「これまで」がどうだったかを明らかにしてきました。

 

このうち、「5W」は「やること(内容)」に当たります。

この「5W」についてはすでに述べました。

残るは「1H」ということになります。

 

ある意味、具体的、現実的に最も変化してきたのは、この「1H」である「How」かも知れません。「How」については

「Howどうやって・・・専門知識を有する税理士などの専門家が、上記のような内容の仕事を、その専門知識とコンピュータなどの情報処理機器を駆使して・・」

と定義づけました。

「上記のような内容」というのは、「5W」で定義づけた各項目です。

この「5W」に当たる「やること(内容)」をどんな「やり方(方法)」で処理してきたのかが「1H」に当たるわけです。

 

税務会計の専門家である我々が、一貫して取り組んできたのは、数値の計算でした。

業績としての結果を計算し、それが定まらないことには、納税の金額が確定しないからです。

 

私が大学を卒業し、会計事務所に就職した約40年前は、数値の計算は算盤(そろばん)を使用していました。

この算盤が極端に苦手だった私は、この点で非常に苦労させられたものです。

当時は各会計事務所に、名人芸といえるほど算盤の扱いに長けて、計算の速い人材が何人かは必ずいたものです。

 

その後、電卓の性能が格段に進歩し、しばらくは電卓の時代が続きました。

しかし、世の中にPC(パーソナルコンピュータ)が普及し「表計算ソフト」が登場したことで、「数値の計算」という世界が劇的に変化しました。

いわゆる「計算」という行為を、ほぼしなくても済むようになったからです。

 

それまでは、データの計算には「記入」或いは「記録」と「計算」の2段階が必要でしたが、表計算が世に現れてからは「記録」と同時に「計算」は終わっている、という世界になったのです。

職人技に近かった「計算の速さ」という特殊技術の持つアドバンテージはここで終わったことになります。

 

さらにこの「データの取り扱い」について、劇的に変わったのは、「上書きができるようになった」ということだと思います。

それまで、「データ」というのは毎年、毎回、同じことを繰り返し記述する必要がありました。

 

ところが、記録データのベースの部分が同じであれば、前回までのデータがそのまま使え、変わった部分だけ上書きすれば済むようになったのです。

こんなことは、今では当たり前の世界かも知れませんが、昔は毎回毎回、前回までのデータをすべて転記するという作業を繰り返していたのです。

 

計算機で作業しているペンを持っている会計士

電卓を使う場面も減りました。

つづく