電卓と決算表

7月1日より、改正民法(相続法)が施行されます!第1回

「遺産分割における税法と民法の齟齬の解消」

「遺留分制度の見直し」

「相続以外の者の貢献に寄与する制度」

が7月1日から施行されます。

 

と言われても、具体的にそれがどういった事か分からない・・・。

今回も上記のような難しい内容を詳しく解説していきます。

 

 

今回は

「遺産分割における税法と民法の齟齬の解消」

についてです。

【齟齬】:うまくかみ合わない、食い違い

 

まず、相続のお話ですので、相続財産がある事が前提です。

その内の、不動産(家など)のお話なんですが、

 

まずポイントになるのが、「税法民法では考え方が違う」という点です。

 

税法には、

「婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産又は居住用不動産の購入資金の贈与が行われた場合に、贈与税の基礎控除110万円の他に最高2.000万円まで控除できる『贈与税の配偶者控除の特例』がある」

という制度があります。

 

つまり、婚姻期間20年以上の夫婦間、例えば夫から妻に居住用不動産の贈与があった場合、贈与額が2,110万円までであれば贈与税がかかりません。

そして贈与完了時点で不動産は妻のものになっているので、夫が死亡した場合、相続財産とはなりません
ただし、税法上贈与から3年以内に夫が死亡した場合は、贈与された不動産も相続財産の一部とみなされます。

 

 

仮に贈与から5年後に夫が死亡し、預貯金が5,000万円あったとします。
相続人が妻、子供A、子供Bの計3名だった場合。
税法上の相続財産は、5,000万円となり(贈与から3年以上たっているので不動産は含まれない)、この5,000万円を3人で遺産分割することになります。

法定相続割合で分割すると、

・妻 : 5,000万円 × 1/2 = 2,500万
・子A : 5,000万円 × 1/2 × 1/2 = 1,250万
子A : 5,000万円 × 1/2 × 1/2 = 1,250万

では、遺産分割協議の際に、「生前に贈与された不動産があることは不公平である」と、子供達が主張した場合はどうなるでしょう。

 

このように特定の人が生前に何らかの利益を得ていた場合、民法ではこれを「特別受益」と呼びます。これは遺産の先渡しであると判断され、相続財産に加算することになります。【特別受益の持ち戻し】

特別受益には時効がないため、今回のケースでは5年前であろうと相続財産に加算することになり、相続分の計算も複雑になります。

 

特別受益があった場合の相続額(相続時の不動産価格を1,000万円とした場合)

・妻 : (5,000万円+1,000万円)× 1/2 - 1,000万円(特別受益分) = 2,000万円

・子A :(5,000万円+1,000万円)× 1/2 × 1/2 = 1,500万円

・子A :(5,000万円+1,000万円)× 1/2 × 1/2 = 1,500万円

 

税法に則った遺産分割と民法に則った遺産分割の結果を比較すると、

妻の取り分が、500万円減少することになります。


これが、「税法と民法の齟齬」ということになります。

 

 

そこで先ほど述べた「遺産分割における税法と民法の齟齬の解消」

が出てくるのです。

言葉を要約すると

 

「遺産を分ける時に起こっていた、税法と民法の食い違いを無くす」

 

ということになります。

今回の民法改正によって、これまで起こっていた食い違いが無くなります。

 

具体的な内容としては、

生前贈与された家(不動産)は、ご主人が亡くなって遺産を相続するという場面になっても、奥さんから「この家も相続税の対象にしてください!」という特別なお願いがない限り、相続財産の計算に含めませんよ、という事です。

形としては、民法が税法に合わせた、と言えるでしょうか。

 

 

超高齢化社会になっていくであろう日本において、

奥さんの老後の生活に配慮した「使える」法律なのではないでしょうか。