電卓と決算表

公私混同に注意しましょう ~後編~

○社員のモチベーションの低下や社内不正を誘発する○

社長の公私混同を社員はしっかりと見ています。インターネットの質問箱や掲示板には、「社長の公私混同をやめさせるにはどうしたらいいか」「税務調査の時に私的費用のつけ回しを見つけてもらうにはどうすればいいか」といった声なども数多く書きこまれています。

ワンマン社長が多い中小企業では、社長の公私混同があっても、誰も意義を唱えることは出来ません。すると、社員のモチベーションが低下して、業績にも影響します。あるいは、モラルが低下し、「社長がやっているのだから、自分も少しくらい…」と社内不正の起こりやすい組織風土となりがちです。

○取引先や金融機関など対外的な信用が低下する○

金融機関は、融資先の信用格付けを行う際、経営者に公私混同があれば評価を下げています。例えば、次のような事項が厳しくチェックされます。

1.営業規模に比べ、社長の使う経費が多くないか

2.経営に関係のないような資産等が多くないか

3.社員を私物化して、私的に利用していないか

4.社長が見栄を張るタイプだったり、家族が派手好きでないか

【事例】

A社長は、景気の低迷から、資金繰りに困り、長年取引のあるA信金に追加融資を求めたところ、「融資の前に、まず役員社宅や趣味の外国製高級車を処分して、借入金を返済してほしい。その上で新たな融資を考えましょう」と断られてしまいました。

意外なことですが、資金繰りが苦しい企業ほど私的資金の流用が少なくないという傾向があります。税務上、社長の給与等に認定されないものもありますが、そのような余裕があれば、借入金の返済、内部留保、事業資金等に充てるべきです。

経営環境が厳しいときほど、経営者自らが襟を正して、公私のけじめをつけた行動をとらなければ、本当の前者一丸体制はとれないのではないでしょうか。