電卓と決算表

運転資金調達のポイント

先日の会計ニュース「事務所通信7月号」で、融資のポイントについて触れていますが、
更に少し踏み込んだことを今回は書いていこうと思います。

事務所通信7月号もよかったら合わせて読んでみてください。→会計ニュース

運転資金とは

まず、資金は大きく分けて「運転資金」と「投資資金」に分けられます。

今回は、改めて「運転資金」について説明します。

運転資金は簡単に言うと「事業を行うために必要な資金」です。
売上を上げるためには、仕入・材料・人件費等様々なコストが発生しますが、その支払い原資は当然のことながら売上となります。

多くの企業は、掛取引をしていますので、売掛金を回収した際のお金で各支払いを行いますが、売掛金を回収するまでは支払い分の資金が足りない状況となり、この足りない資金が「運転資金」となります。

そのため、現金商売をされている場合、運転資金は必要ありません。
仮に現金商売をしている方が「運転資金を融資してほしい」と銀行に相談に行っても「?」という顔をされてしまいます。

主な運転資金

さて、事業を行うためにとても重要な運転資金ですが、
いくつか種類があるのをご存じでしょうか?


1.経常運転資金

一般的な運転資金とは「経常運転資金」を指します。
先に述べた入金と支払のタイムラグを埋めるために必要となる資金です。

2.増加運転資金

順調に売上が伸びている場合に必要となる運転資金です。
売上が伸びるということは・・・

・商品の仕入や製品の材料仕入が増える(変動費)
・販売や製造に要する費用(例えば送料や包材費、水道光熱費等)が増える
・場合によっては従業員の増員により人件費が増える

など、売上が増えるとともにコストも増えていくことになります。当然、入金される売掛金も増えますが、コストの支払いも増加します。

この場合、入金と支払のタイムラグに必要となる資金はこれまでより多くなることから、
経常運転資金よりも多くの資金が必要となります。
そのため、急激な売上増によって、一時的に資金繰りが厳しくなることがあります。

3.季節運転資金

特定の時期に必要となる運転資金です。

例えば農業のように季節の影響を大きく受ける業種や
特定の時期(大型連休や年末年始、クリスマス等のイベント時期)だけ大きく売上が伸びる業種もあります。
このように、毎年同じタイミングで必要となる運転資金を季節運転資金と言います。

4.サイト変更資金

これまで運転資金は入金までに必要となる支払資金と説明してきましたが、
取引上、売掛金の回収サイトが伸びたり、支払いサイトが短くなる場合があります。

入金が遅くなればなるほど、支払いが早くなればなるほど必要運転資金は増加することになります。このようなサイト変更に伴い増加する運転資金がサイト変更資金です。

 

銀行が知りたいのは「なぜ必要なのか?」

金融機関に資金調達を相談するにあたり、今回必要となる運転資金はどのタイプなのかしっかりと認識したうえで相談に臨むことが重要です。

なぜなら、金融機関は「なぜ資金が必要なのか?」を知りたいからです。
これは、「返済原資はどこから出すの?」という答えにも繋がってきます。

たとえば・・・

・売上が急速に伸びたことで、一時的に仕入資金が不足しています。【増加運転資金】
    → 売上が安定すればこれまで通りに返済可能。しかも業績は上向いている。

・家電量販店:夏に向けてエアコンを大量に仕入れるための資金が不足しています。【季節運転資金】
    → 夏に仕入れたエアコンの販売代金で返済可能。仕入過ぎて不良在庫化する可能性はないか?

など、「資金の必要性と返済原資確保の根拠」をきちんと金融機関に説明することで、調達がスムーズに進みます。

 

資金調達を検討される際には、「なぜ必要なのか?」を一度深堀りしてみてください。