夢でもいいから会いたいよ・・・―こんな夫婦の絆もあるのか・・・―Ⅲ(おしまい)

「俺の人生はつまらないものだった」と、つぶやいた夫に「いや、そんなことはなかったよ。この60年間、私はとても幸せだったよ」と、返したこの奥さんのお話・・・

 

それは次のように締めくくられていた。

―夫とのいつもの散歩道を歩いて「お父さん聞こえるかい」と話しています。夢でもいいから会いたいよ。

夫を亡くした友人がいますが、いつになったら、その友人のように明るく元気に過ごせるのでしょうか。―

 

この前のフレーズでも思わず泣きそうになった私だが、このフレーズでは本当に涙がこぼれる。

「夢でもいいから会いたいよ。」・・・このご婦人の喪失感、寂しさというものが強く伝わってくるのだ。

 

人は一生のうちに、いろいろな「死」の場面に向かい合う機会に遭遇するだろう。

ときとしてそれが、納得のいかない、想定外のものであったならば、このような「夢でもいいから会いたいよ・・・」といったフレーズが出てくるのではないだろうか。

 

それにしても60年間連れ添ったということは、普通に考えればこのご夫婦の年齢は80代か90代である。

突然の死だったとはいえ、これだけ連れ添えば、吹っ切れそうなものである。

 

それがそう思えないところに、このご婦人の悲しみの深さを感じる。

よほどいい人生だった、と思えなければこうはならない。

だから、きっと優しいいいご主人だったのだろう。

 

「俺じゃあきっとこうはならないだろうな。」

と思っている自分がいる。

少しでもこのご主人に近づけるように、これから努力してみるか・・・・・

 

最後にこのご相談の全文を通しで掲載させていただきたいと思います。

 

―昨年の2月、60年間連れ添った夫を亡くしました。あまりにも突然で、今でも大きな悔いが残っています。

夫は明るい性格で、働き者でした。私は夫が大好きで一時も離れたくはありませんでした。

亡くなる前の日の朝、夫は駅周辺を散歩しながら「俺の人生はつまらないものだった」とぽつりとつぶやきました。私は「いや、そんなことはなかったよ。この60年間、私はとても幸せだったよ」と心からお礼を言いました。お父さんの陰で何一つ不自由することなく、毎日が楽しかったのです。

まさか夫が倒れるとは思っていませんでした。私にはもったいない夫でした。

夫とのいつもの散歩道を歩いて「お父さん聞こえるかい」と話しています。夢でもいいから会いたいよ。

夫を亡くした友人がいますが、いつになったら、その友人のように明るく元気に過ごせるのでしょうか。―

 

ご主人のご冥福をお祈りいたしたいと思います。

 

 

 

おしまい