経営の分岐点―二代目の視点によって独自性を際立たせる―Ⅰ
タイトルの「二代目」というのは、別に二代目だけでなく三代目でも四代目でもいいのです。
広く後継者のことを指しており、時代性に敏感な若い経営者ということです。
更に言えば、年はあまり関係なく時代が変わっても対応力に富んだ柔軟な感性を持っていれば、むしろ誰でもいいのです。
私は常々「素人目線に立ってみることが大事」と言っています。
それは、自らの専門性の世界の中でどっぷりと仕事をしてきた現役経営者には、この「素人目線」即ち「顧客目線」という立場がわかりにくいだろうと思っているからです。
ところが世の中には、専門事業者でありながら、この「素人目線」の側に自然と立てる立場の人間が一人だけいます。
それが「後継者」なのです。
後継者は普通の場合、先代(親である場合が多い)の背中を見て育ってきていますので、その専門性についてはある程度理解しています。
しかし、一方で地元を離れて大学に進学したり外の企業で一度働いたりしていれば、自社とはまた違った世界を見てきていることも確かです。
そういった違う発想を持って自社のある地元に帰ってきたときに、おそらく何とも言えない違和感を覚える瞬間が多々あるのではないでしょうか。
それは、先代や先々代がそれまで守ってきた伝統や仕事のやり方、或いは地域性といったものが、自分が見聞きしてきた世界とあまりにもかけ離れたものであるときに強く感じるはずです。
そんなとき、そういった既存の価値観に対して、疑問と同時にある種の不安を覚えるのではないでしょうか。
自分が見聞きしてきた現状とは随分乖離しているな、と。
そして後継者が、そういった疑問や違和感を言葉にして表に出した途端、間違いなく現役である先代とぶつかることになります。
以前私は、
「先代とぶつかったケンカの内容そのものを、後々振り返ってきちんとその中身を精査し整理してみれば、それはそれなりの内容を伴った情報発信のネタに充分なり得ますよ。」
と書いたことがあります。
それはまさに上記のような状況のことなのです。
このように、後継者は、自社の事業を客観的に見ることができる立場にあります。
そのとき「事業者目線」としてだけでなく「顧客目線」で見たらどうか、という視点を自らの発想に明確に組み入れてみれば、より客観的な自社評価というものが可能になるのです。
これは後継者にしか立つことのできないポジションと言えるでしょう。
つづく