父が逝った―亡くなるまでの1週間を振り返って―Ⅶ
母と交代して私は家に帰ることにする。
もう遅い時間だったので、私と家内は病院から少し離れた市内のカフェレストランで食事をした。
週末の店内は、若いグループ客で賑やかだった。
その喧噪をよそに私と家内は静かに食事をとる。
溢れるエネルギーを持てあますかのような若い生命が、すぐ傍らで騒いでいる。
その隣に、もうすぐ死を迎える肉親を抱えた私たちがいるのだ。
この皮肉なコントラストに、人が生きていくということの不可思議に思いが及ぶ。
その掘り下げた先にある何か深い意味のようなものを考えざるを得ない。
次の日は月曜日だったので私は事務所に出勤する。
普通通りに仕事をこなして夕方病院に行った。
二日続けて病院泊まりの母を一旦連れて帰る。
夜、私だけ病院に戻り、その日は私が泊まることにする。
固いソファーの上であまり眠れない夜を過ごした。
本やパソコンを持って行ったが、そんなものに目を通すことも触ることもなかった。
父も大きく動くこともなにか声をあげるようなこともなかった。
浅い眠りのあと早朝に目を覚ました。
父の様子を見ると比較的安定しているようだった。
父の胸のあたりに手を当てて
「俺は仕事に行くよ。しばらくしたらお母さんが来るからね。」
と声をかけて、朝もやの中、車を飛ばして家に帰り、その日(火曜日)はいつも通りに仕事をこなした。
つづく