地方におけるビジネス感覚を考える―地縁血縁商売との決別?―Ⅳ

さて、

「なぜこんな風に普通の商慣習やビジネスマナーが行われていないのだろう?」

と最初不思議だったが、やがてその原因を掴むことができた。

それは地元が極めて「地縁血縁」で結びついた社会ということだったのである。

つまり、地域社会そのものが、いちいち堅苦しい挨拶などしなくても、俺のことは知っているはずだ、私のことはよくわかっているはずだ、という前提に立っているのだ。

 

そういった地域独自の前提が、オフィシャルとプライベートとのけじめやメリハリをきちんとつける、といったことが成されていない緩さに繋がっていたのである。

相手の来歴や氏素性をよく知っているということが、ビジネス上でもプライベート上でも最も大切な条件の一つとなるのだ。

そのことが、地域社会を成り立たせている重要な要素だったのである。

実際そういった背景の下で、地域の営みが成り立って来たし、今も成り立っているわけだから、このすべてを否定することはできない。

 

ただ、私のようにかなり長い間地元を離れていた人間にとっては、現実的な情報(地元の人々の氏素性など)も、またそういったマインドも自分の中にないものだったので、極めてやりにくかったことは確かである。

このようなマインドを持ち、地元の情報にいろいろと明るいということが、地域社会で暮らす上でマイナスに働くということは特にない。

 

つづく