「働き方」について考えるⅠ
先日、新聞の書評欄に面白い一文があった。
「その日暮らし」の人類学(小川さやか著)という本に関する、旦敬介氏(明治大学教授)の書評である。
評者は、大学の先生として日常的に学生たちの「就活」の現場に触れ、その安定志向ぶりをつぶさに見ている。
その現状に対してこの本は
― 安定した未来のために現在を我慢する方がいいのか、第一、安定というのは幻想ではないのか、と問いかけ、反主流的な働き方へと挑発的に誘う。―
ということらしい。
なるほど面白そうだ。
書評は以下のように続く。
― (この本は)日本人の仕事観が世界の全体の中ではきわめて異様なものであることを示す。
世界の大部分では安定した雇用はむしろ稀なものであり、ほとんどの人が雇用されずに自分の工夫で小規模なビジネスを展開して人生を構築している。
そのような仕事では未来はまったく不確実だが、まさにそれゆえ、急速な成長が可能であり、状況の激変にも対応でき、リスクの分散もしやすくて、かえって強さと安定性があるというのだ。
不確実であることは希望がないことと同義ではないという。―
学生に限らず、ほぼ日本人全体に共有されているであろう「安定志向」の仕事観は「きわめて異様」とさえ書かれている。
つづく