観光産業に見る日本の産業構造の問題点Ⅶ

「業界の常識」の最たるものに「人事」があると言えるだろう。

「人事」は「役職」と読み替えてもいい。

これは、その業界業界においてかなり独自のものがあり、それを当り前の世界として受け入れているのはその業界内部の人間だけ、ということも珍しくない。

 

例えば、私の所属している税理士会では、会長、副会長、専務理事、常務理事、理事、監事、委員長、室長、県連会長、支部長といった役職があり組織化されている。

もちろんそれぞれに役割があっての組織編成ではあるが、どうしてこんなに細分化されているのか外からはほとんどわからない世界だろうと思う。

 

また違う角度で「業界の常識」を取り上げれば、農業の世界において、何か新規の取り組みを始める際に、補助金や何らかの助成制度があることが半ば常態化している、ということがある。

農業政策がそれを当り前のこととして運営されてきているので、受ける側もあまり疑問を持たない。

 

「援助があって当たり前」という業界の常識は、事業の健全な発展を阻害する。

ここにおいては

「事業というものは、収益が費用を上回らなければ成立しない。」

という基本的な事実が理解されていないのだ。

 

とはいえ、これらの援護射撃にはそれなりに縛りがあって、それが後程逆の意味で効いてくることも少なくないのである。

事業には一定の自由度が確保されていなければ発展は覚束ない。

補助金による縛りはその健全な発展をしばしば阻害するのである。

 

 

 

つづく