観光産業に見る日本の産業構造の問題点Ⅴ

さらに、こういった状況に関しては以下のように指摘している。

 

― そもそも「客が来るから店を開く」という発想自体がおかしくて、いかに客にきてもらえるかという「知恵出し」を放棄してしまっているわけです。

夜も開いて、夜来てもらえる営業企画を考えよう、朝も開けて商売になるにはどうするか、ということにはならないわけです。

 これには、地方の観光産業が地縁型事業であり、家族型事業であるという側面が強くあります。

 地縁型事業だからこそ、もし横並びルールを逸脱し、地域でにらまれると営業が行いにくくなる。

「ムラ社会システム」を壊してまでリスクは負いたくない。

さらに家族型事業だから、無理してまで業績を伸ばすのではなく、一定の規模を維持できればそれで十分という思考になりがちです。

何より、黙っていても、有名な観光拠点があるために、一定の集客を実現できる立地の土地・不動産を保有して営業していればどうにかなる、という恵まれた観光地ほど、この傾向は強いのです。―

 

ここに書かれている「知恵出しの放棄」という指摘は、先述の「成功体験依存症」によってもたらされる症状の一つである。

なおかつ最も根の深い症状の一つと言ってもいいだろう。

 

 

つづく