かれこれ40年の時空を超えて―やっとの思いで再会したあの一品は意外にも・・―(後編)

ひょっとして偽物じゃないの?!

長年探し続けてようやく発見し、やっと手にしたフランス製のPコート。手元に届いたそのコートに、クソ暑い夏の日中にもかかわらず、鏡の前で手を通し試着してみた。そして「おっ、やっぱりなかなかいいじゃないか、長年探し続けていたこいつ。」と、ほくそえんだのである。

と、ところが、そこで私は、およそ信じられないような衝撃の事実に遭遇したのだった。一体それは何だったのか?

通常Pコートというのは、前身頃の左右に二つのハンドウォーマーポケットがついている。私が既に持っている他ブランドのものも同様のデザインである。胸のあたりの高い位置に斜めにつけられており、収納が主たる目的ではなく、真冬の寒いときはここに手を突っ込んで温めるのだ。

ところが、ところがである。この「セントジェームズ」のPコートは、ハンドウォーマーポケットに手が入っていかない。突っ込もうとするのだが、どうしてもつっかえてしまって入っていかないのだ。

ん?ん?と疑問に思い、脱いで調べてみたらなんと「セントジェームズ」のPコートのハンドウォーマーポケットは形だけのダミーだったのである。「そんな馬鹿な!」と、なんどもひっくり返したりして調べてみたが、どうこねくり回してもハンドウォーマーポケットはふさがったままだった。

そのとき頭に浮かんだのは、おそらく皆さんもピンと来たんじゃないかと思うが

「こいつ、偽物じゃないの?!」

ということだった。

そう思って、タグなどよーく見てみても、ちゃんと「メイドインフランス」と書いてある。しかし、偽物業者なんて、そんなタグくらいいくらでもつけるだろう。

 

ダミーが普通って?!

「なんだよ、なんだよ、全く。」とボヤきながら、最後の望みにかけてみよう、と考えたのはやはり「チャットGPT」だった。私は「購入した「セントジェームズ」のPコート、ハンドウォーマーポケットがダミーだったんだけどこんなんありなの?」と聞いてみた。

そうすると、さらに驚くべき答えが返ってきた。

「はい、ダミーの場合もあります。ダミーでないものもあるのですが、1990年代くらいに販売されたもののハンドウォーマーポケットはおおむねダミーです。」

という回答だったのだ。私は「はあっ!?堂々とダミーかよっ。」と、心の中で叫ぶ。

まあ、本物が手抜きしているというは本当?で、どうやら偽物ということではなさそうだ。(頭がこんがらがってきますな)1990年代と言えば、ちょうど私が東京でこの「セントジェームズ」のPコートを買おうかどうか迷っていた頃である。あの時買っていたとしても、このダミーポケットにはきっとぶったまげたことだろう。

これってどうなんだろうなあ?と思う。実際、冬Pコートを着用してもハンドウォーマーポケットってそんなに使わないものなのか。私は手袋を割と使う方(その方が両手の自由が利くから)なので、本当に寒い時期でも、そんなにハンドウォーマーポケットの使用頻度は少ないのかも知れない。(だからといって、ふさがってていいとは思いませんがね。)

 

日本だったらあり得ない

それにしても、おフラン人のテキトーさには呆れてしまうばかりだ。日本のブランドだったら、そんなことは絶対にしないのではないかと思う。

ダミーではない、ちゃんとしたポケットの奴もあった、と「チャットGPT」は言っていたから、それって日本のショップとかが別注した奴ではないだろうか。まあこれは私の勝手な推測だが。

この辺、ものすごくどーでもいいけどディープでマニアックな話なので、その辺りの事情とか知っている人がいたら教えてもらいたいくらいである。(「Pコートのハンドウォーマーポケットが何故ダミーだったのか、の謎について」なんて裏話、ちょっと面白いと思いません?・・・面白くないか・・)

不思議なのは、そのダミーポケットも、外側の見た目の縁どりとかはちゃんとしているのである。「ここまでやるんだったら、内側にポケットの袋部分くらいつければいいじゃねえか!」と、日本人の私は思う。しかし、ラテンの彼らには、また違う理屈があるのだろうか。

 

おフランスの屁理屈に屈したくない

で、今少し悩んでいるのは、こいつをリフォーム屋さんに持って行って、ポケットをつけてもらうかどうか、ということである。(今まで、サイズ補正などいろんなリフォームを頼んできたけれど、リフォーム屋さんも、さすがにそんなの(ポケットの穴を完全なものに仕上げる)なんてやったことないだろうなあ・・)

このままフランス人の「どうせハンドウォーマーポケットなんて、実際そんなに使いやしませんよ。このままでいいんじゃないですか。」という屁理屈に屈するのもちょっと悔しい気がする。

これは「ラテンええ加減魂」と「日本真面目魂」との文化的戦いでもあるのだ。

負けるわけにはいかない。

外目にはちゃんとしたポケットが付いているのだから、中に手を入れることができてナンボの世界だろう。と言っても残暑は厳しく、まあ、まだ冬は遠い季節のようなので、本格的に寒くなる前までには結論を出してみるかな、と思案しております。・・という、他人(ひと)にとっては、まさにどーでもいい話でした。

 

おしまい