時代によって真逆になる着こなし―「着道楽」?楽しく、面白く生きるのが、私の人生の目標(by石津謙介)―Ⅴ
男の装いには、いろいろとルールがある、ということを知ったのは、カミさんが貸してくれた本を読んでからのことだった。
中でも、IVYファッションやトラッドファッションには「ねばならない」系のルールが多かったのである。
まあそんな風に、なんだか決めごとがいろいろあって、うるさいのがIVYファッションだな、という思いがあった一方で、中にはそれまでしたことのないようなやや崩したような着こなしもあって戸惑うことも多かった。
細かい決めごとがあるにもかかわらず、アメリカ人らしいおおらかさやアバウトさが反映されているといった一面もあったからである。
例えば、最初、ボタンダウンシャツにネクタイをするというのが、どうもピンとこなくて違和感があった。
それまで、ネクタイを締めるときのシャツは、プレスのかかった真っ直ぐな襟でなければおかしいだろう、と思いこんでいたからである。
当時のメンズ雑誌などを見ていると、アメリカ東部のIVYリーグの大学教授などは、よれっとしたジャケットに洗いざらしのオックスフォード生地のボタンダウンシャツ、ネクタイといった格好をしている。
プレスのパリッと効いたホワイトカラーのシャツにシャープなスーツといったウォールストリート系ビジネスマンとは真逆の雰囲気である。
しかもそれがカッコイイ。
IVYファッション、いろいろ、ルールはあるが、着こなしそのものにはユルさもあって、かつ知的にも見える。
といった、それまで体験したことのない洋服文化に触れて、大いに触発されたのだ。
また「アメリカングラフィティ」という映画を観たとき、主人公のリチャード・ドレイファスが、劇中ずっとインディアマドラスのスポーツシャツのすそをズボンの外に出していた。
その姿に、最初かなりの違和感を覚えたのである。
あの恰好を最初見たときは「なんちゅうだらしない!!」と思った。
当時は、シャツをズボンの外に出したまま、というのが、なんだか信じられなかったのだ。
今ではカジュアルスタイルのとき、シャツをタックインしていることの方が、むしろ違和感があるかも知れない。
このように、服のデザインや着こなしというのは、時代によって随分変化する。
それまで「当たり前」と思っていたそれらの形態が、全然真逆になってしまうこともあるのだ。
これはお客さんのお店で購入した現代的なBDシャツ。
つづく