ボトムアップパワーの衝撃―風通しの良い組織こそ21世紀のあるべき企業像では?―Ⅲ(おしまい)

職員たちの突き上げを喰って、「値上げのお願い行脚」という苦しい役回りをやることになった私。

しかしまあ、確かにこれは、他の人に頼むわけにはいかない親分の任務であることに間違いない。

 

というわけで、久しぶりに立て続けに、お客さんのところを訪問することになった。

すると、うちの職員たちときたら、容赦なくびっしりとスケジュールを入れてきやがるのですわ。

 

値上げの話に関係なく、決算報告などで訪問予定のお客さんもあるので、合わせると立錐の余地もないくらいスケジュールが埋まってくる。

確かにここ2週間くらいは目の回るような忙しさであった。

 

しかしである。

職員たちがいれてきたスケジュールに忙殺されながら考えた。

「これって、すごくいいことなんじゃないの?!?」と。

 

普通、我々の業界だと所長が絶対的な存在であり、ほとんどの意思決定は所長を通じて行なわれる。

今回の料金改定も、私だけの考えだったら実行していなかっただろう。

そこに踏み切る度胸はなかったような気がする。

 

しかし、今回現場の感覚を伝えてくる声は結構大きかった。

「消費税の改定は、予想以上に処理業務の煩雑さが現場にのしかかってきます。現実にそうなっています。」

という報告は、職員サイドからの声として、ある時点からまとまったものになっていたのである。

 

こうしたボトムアップの意見を取り入れて今回の料金改定に踏み切ったのだ。

私はこれでよかったと思っている。

極めて複雑化した現在の経済社会において、一人の意思決定だけで、様々な課題を乗り切っていくのは不可能である。

 

複数の知恵を結集していかに経営に活かしていくか、というのが、トップマネージメントの役割であり、力量なのではないだろうか。

そういう意味では、うちの事務所も相当風通しがよくなってきた。

 

この企業風土をもっと伸ばしていけば、しかるべき21世紀型の組織が出来上がるのではないかと期待している。

次は

「発見しました!顧客の業績を伸ばすにはこれしかありません。」

なんて提案が上がってくると面白いな。

 

 

 

 

 おしまい