驚くほど速いデジタル世界の時間スピード―代償は生産性3分の1・・・―Ⅱ

「GAFA断ち」実験は、先述のように、「スマホの電源を切ること」で始まったのである。

早速、彼の身辺にどんなことが起こったのか、次のように書かれている。

 

―位置情報やネット検索履歴データなどを4社に渡さないよう、それらのサービスや製品を使わずに暮らしてみようと考えた。

今の取材テーマはデータ規制の動向。

予習が必要だ。

だがグーグルで検索する「ググる」はご法度。

図書館にこもる時間が増えた。―

 

皮肉なものである。

「データ規制の動向」というテーマを調べるのにも、まずはGAFAに頼りたくなる。

しかし、今回はそれができない。

アナログ世界の代表として、いきなり「図書館」が登場したのには、「あ、そうか!」と、驚かされたような納得したような複雑な感じである。

 

図書館通いの結果、どのような事態になったのかが興味深い。

それは次のように書かれている。

 

― ネットでは簡単に閲覧できる海外の最新の研究資料は書架になく、数カ月遅れの情報が載った専門雑誌を探すだけでも一苦労。

あっという間に半日が過ぎる。―

 

図書館でものを調べるとなると、時間がかかるだけでなく、資料そのものがまだ到着していない、という状況に巻き込まれるのだ。

アナログが遅いというより、デジタルの時間スピードは驚くほど速い

 

この差は、こちら側にとって、時間のロスと同時に資料の存在自体に手が届かないのだから、ことは深刻である。

その深刻さについて、この後さらに彼は実感することになる。

 

 

つづく