鬼のように頑張って納品―ハッタリの効用?想定を超えたテーマは人を成長させる―Ⅴ
「予算が少なくて800万円しかないけどそれでいい?」
と聞かれて、その返事は、さすがに0.2秒とはいかなかった。
それでも踏ん張って0.3秒くらいで返事をする。
「わ、わかりました。な、なんとかしましょう。で、では、その金額で見積もりも、調査設計書と一緒に作ってまいります・・・」
かろうじて、とだけ答えて、我々はN総研をあとにしたのである。
天下のN総研相手に、1発目の営業で、こんなことになるとは全く思いもしなかった。
ビルの外に一歩出て、二人ともガクガクっとひざが崩れる。
「は、はっぴゃくまんえんですよ。どうします?僕らの手に負えるでしょうか?」・・・
が、そんなこと言っていても始まらない。
N総研への営業、ということで、会社で待ちわびていた社員たちも、今回のテーマを聞いてビビった。
「そんな難しい案件ぼくたちにできるわけないじゃないですか。とても無理ですよ。」
と、総スカンである。
「しょーがねえだろ、受けちゃったんだから・・・とにかくやるしかないんだよっ!」
と、なだめすかして取り掛かることになったのである。
その頃日本には、テーマパークに関する様々な資料など全くなかった。
考えてみれば当たり前の話で、そういった資料がこの世に存在しないからあのN総研がわざわざ私たちのようなゲリラ的業者を使ってでも、何かしらのデータを手に入れようとしたのである。
確かにそれは、私たちの身の丈に余る案件で、リサーチしレポートをまとめるのに非常に苦労した。
しかし、とにかく鬼のように頑張って、かなり優れたレポートを納品することができたのである。
そして、その後私たちは、N総研の外注先として登録され、レギュラーで案件を受注できるようになった。
N総研の案件をこなしたというバリューの効果は抜群で、その後の営業が極めてやりやすくなったのである。
つづく