スポーツの世界で結実した「目標管理」の基本形―脳の構造的支配から自らの意識を解放する―Ⅴ
エベレストの登頂よりも難しいと思われていた1マイル走4分を切るという壁。
この困難な壁への挑戦を、あきらめずに続けていたランナーがイギリスにいたのである。
その挑戦の歴史についてこのコラムでは次のように書かれている。
―そんな背景の中、イギリスで医学生ランナーのロジャー・バニスターという選手が現れます。(中略)
彼は
「もう4分を切ることを目指すのはやめよう。これからは自分の記録を毎回16分の1秒(=0.0625秒)縮めることだけを目標としよう」
と考えました。
毎回たったの16分の1秒ずつタイムを縮めることはそんなに難しくない。(中略)
乗り越える壁を、4分という〝人類には不可能といわれている大きな壁〟から、たった16分の1秒という〝これならできると思える壁〟に変えたわけです。
結果、16分の1秒ずつ更新、最終的に1954年5月にバニスターは3分59秒4という、人類初の1マイル4分の壁を破る世界記録を樹立したのでした。―
これを読んでいると、人類が1マイル4分の壁にいかにこだわったかということに思いが至る。
そして、目標に対していかなる手段で臨めば解決できるのか、という点をあれこれと追求したのである。
大きな目標に対して、そのプロセスを細かく分解して一歩一歩積み上げていく、というこのやり方は、こういったスポーツのチャレンジならずとも、経営上のお手本として参考になるのだ。
この細かい目標を設定してそれをクリアしていくという方法については、「目標管理」の基本形であろう。
さて、このロジャー・バニスターの4分を切るという目標達成がその後の陸上界にどのような影響を与えたのかが面白い。
その点に関しての世界で起こった現象についてこの後書かれている。
つづく