民主政の危機を感じさせるトランプ大統領の手法―民主政治の危機、その脆弱さについて考える―Ⅵ

中国、ロシアが存在感を増し、アメリカにはトランプ政権が誕生した。

こういった世界の流れに関して細谷教授は、さらに次のように述べられている。

 

―世界では今、中露などの権威主義体制の国々が影響力を拡大し、対照的に米国や欧州では民主政の危機が語られている。

そして、人工知能(AI)や科学技術の発達に伴い、我々の生活は国家に監視され、操作される可能性が高まっている。

ここで重要なのは、トランプ政権が「民主政の終焉」をもたらしたのではなく、むしろ「民主政の終焉」に向かう過程の中で、米国にトランプ政権が誕生したことである。

米国民は、より理性的なヒラリー・クリントン候補やワシントンのエリートたちによる統治を拒絶したのだ。―

 

さて、このあと、中露のような国々がどこまでその影響力を伸ばしていくのであろうか。

その強引さや覇権志向が世界に歓迎されるはずもないが、今の世界の流れを見ていると、その力の前に屈服していく可能性はそれほど低くない。

 

だからといって、そういう世界の流れを見ていたアメリカの国民がトランプ政権を選んだとは思わない。

トランプ政権の誕生はアメリカ内部の事情によるものだろう。

 

しかし、結果としてトランプ大統領は、貿易問題で中国との対決姿勢をあらわにした。

いかにも強引に見えたその姿勢自体だが、アメリカ国内では一定の支持を得ているのだ。

 

権威主義への対決姿勢を明確することで強い支持を獲得していくトランプ大統領のようなやり方は、いかにも民主政の危機を感じさせる。

それはまるで、拳と拳がぶつかる殴り合いの喧嘩のような状況である。

しかし、そういった姿勢がアメリカ国民の人気につながっていることも否めいな事実だ。

 

こういった世界の潮流に対して、細谷教授は日本とドイツの役割が大切であることをこのあと述べておられる。

この民主政の危機に関して両国の果たす役割が大きいとしたら、我々はそのことを肝に命じておく必要があるだろう。

 

つづく