自分が変わるという選択―挑戦者は常にアゲンストの風にさらされる― Ⅳ(おしまい)
ところで、桜井社長は自分が挑戦している新しいタイプの試みが「伝統」や「業界」の価値判断といったものと相反した場合、どう考えるべきか、何を基準に判断するのかについても言及されていました。
その判断基準というのは
「どっちの言い分が顧客のためになるのか。」
ということです。
常にこの原則で判断したと述べておられました。
私も桜井社長と同意見です。何かを革新しようとすると、必ず周りから非難の声が上がります。
そんなとき、非難する側は、常に自分の方の利益権益を優先させ、ぶち壊す側は顧客の利益を優先させている、と、私は思います。
これは私がこれまで見てきた経験上、ほぼ例外なくその通りでした。
業界、組織、或いは地域など、何らかの形で人間がマスとしての一つの集団になると、必ずそこでは保守化のベクトルが働きます。
もちろん保守のすべてが悪いと言っているのではありません。
しかしながら、こと経済活動において、時代背景その他の理由で変化が求められているにもかかわらず、保守の力が強く働いて、変革できないでいるのは致命的です。
そして、
「そのことによる弊害があらゆるところで起きている、それが今の日本の姿である。」
と私は思っています。
残念ながら、業界や地域のマスとしての存在に対してその意識を簡単に変えることはできません。
相手が変わらないのであれば、こちらが変わるしかないと思います。
私は、自分の顧問先企業を含めて、個々の存在が変わっていけばいい、と思っているのです。
その割合が増えてくればやがて全体に大きな影響を及ぼすことになるでしょう。
桜井社長のような先駆者に続く若い元気のある経営者が次々と出現することを祈るばかりです。
おしまい