軽井沢別荘滞在記―旧交を温めた2日間―Ⅲ
夕食はすべてKの手作り。
後で自ら誇らしげに語っていたが、この男の手料理は、すべて素材から手をかけたもので、冷凍食品など一品もない。
何種類ものご馳走が準備してあった。
Kがこれほどまめな男とは知らなかった。
私と違ってカミさんなしでも悠々と生きていけるな、と思った。
私とMはテーブルセッティングをちょっと手伝ったくらいで、男3人、盛大な宴が始まった。
とはいえ、我々は酒を飲む。
料理もさることながら、地ビールにワインに焼酎と進んでいくと、酔うほどにみんな口も軽くなる。
50年来の付き合いである我々には、濃い時間を共有した思春期の頃を同根とする無限ともいうべき共時性があるのだ。
だから、こういう設定ともなると話は尽きることがない。
ただ、体力的にはやや衰えが見え始めていることも確かな事実である。
Mはなんだかへべれけになってきた。
「完全に撃沈する前にカラオケやろうぜ。」
ということになり、カラオケセットのある研修室に場を移す。
カラオケセットといっても、一般家庭にあるそれとは違ってかなり本格的なマシーンだ。
歌いなれたKはともかくとして、酔っぱらったMと私は単なる音痴親父の域を出ない。
散々騒いだ後、「さあ寝ようぜ。」となったのは夜中の1時を回っていた。
夕方5時過ぎから宴を始めて、何回も時計を見ながら
「まだ、こんな時間だぜ。こんなに早い時間から酔っぱらうなんて久しぶりだなあ。」
などと言って飲んでいたのに、気が付いた時はすでに8時間を超えていたことになる。
ヘロヘロとベッドに入って一日目は終わった。
つづく