成功体験という劇薬―ビジネスモデルのチェンジは図れるのか―Ⅴ
おそらく人は、本質的に「威張りたい、威張ってみたい」という動物なのでしょう。
だから例え一時でも、他者に対して優位に立ったという記憶はなかなか消え去らないものなのではないでしょうか。
私が思い出すのは、バブル全盛の頃、東京では「カフェバー」と名乗る飲食店や、「DCブランドショップ」というファッション系の専門店が大流行りだったことがあります。
この頃、そういったショップで働く従業員たちは鼻持ちならないくらい客に対して上から目線でした。
まるで、下手(したて)に出たら人生の敗北にでもなるのかい?と思えるくらい、徹底して生意気に見えたものです。
そして現在どうかというと、さすがにそんな馬鹿な従業員たちはいなくなりました。
今はどんな人気ショップに行ったとしても、比較的端正に接客するようになっています。
考えてみれば、滑稽とも思えるあんな接客態度は、バブル当時のバカげた時代背景のなせる業(わざ)だったのでしょう。
このように、時として信じがたいほどのパワーを持った「成功体験」という魔物が世の中を席巻することがあります。
バブルというのはまさにそういう時代でした。
そんなときに、その狂ったような雰囲気に流されないように自分を保つのは、結構難しいことなのかも知れません。
とはいえ、ここで
「その『成功体験』という魔物がいかんのだから除霊するかのように努力をしてみなさい」
とか
「カウンセリングでも受けて潜在意識から消し去るように治療しなさい」
とか言っても無駄な話です。
過去の事実に向かってそのような努力をしてもエネルギーの無駄遣いに過ぎないでしょう。
それよりも未来へ向かって何をして行くかです。
つづく